不条理少年のむなしさ
基本的には一話完結方式です。題名の通り、かなり適当な『三文小説』ですのでご了承ください。
熱のせいか、はたまた過度のストレスのせいか彼は覚束ない足取りで一階の薬箱を取りにいくため家の階段を降りる。家族の心配の声を黙殺して淡々と薬箱を探す。目当てのものを見つけ、蓋をあけて風邪薬をあさる。残念なことに、風邪薬はきらしているらしく、途方に暮れる。余計な母の気遣いが彼のイライラを倍増させた。
そもそも、母親が気をきかせないのが悪いのだ。文句と嫌みをいうことが息子を強くし志望校に合格させる一番の手段だと本気で思っているらしい。そしてそれ以外何もしない。母親の心配そうな流し目を尻目に、無言のまま二階の勉強部屋にもどる。無意味で理不尽な怒りを母親に募らせる。
英長文に取り組むも、熱のせいで全くペンが進まない。諦めて、英単語を睨むもこれも頭に入らない。終いには、力任せにペンを机に叩き付ける。わずかに曲がったペンを見て、あまりの情けなさに泣きそうになる。
もとを正せば、自分の体調管理ができていないのが原因だというのに、不条理な怒りが沸く。
夜中の12時をまわったころだろうか、彼は仕方なく椅子から立ち上がる。歯を磨くために、あの忌々しい一階に降りるのだ。もう誰も、一階のはいまかった。全員寝たのだろう。暗闇の一階に電気をつけて、初めて食卓の上の新品の風邪薬に気がつく。恐らく母が買ってきたのだろう、薬のすぐ脇には、母の筆跡の自分を心配するメモ書きがあった。
それを見て、これ以上ないぐらいのむなしさを感じた。