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五百文字の小説

庭園の美

作者: 銭屋龍一

 この世で一番美しいとたたえられたフラクタル王の庭園は今は見る影もなく荒れ果てていた。

 信念のパズルのように王はこの庭園に己の命のすべてを嵌め込み、そして逝った。


 崩れかけた石のアーチ。雑草につつまれた樹木。枯れた小川。竹林の目のように見えるのは王の意思を守ろうとする執事ハウスドルフの東屋である。

 このままでは世界が腐りゆく。であってみれば知らないふりもできない。

 おりしも城下の街でおこなわれていたジャガイモ祭りに天下の魔術師シュガーマジックが訪れていた。執事は彼に頼った。


「この庭園のどこかに透明な図書館が隠されている。それを探し出せ」

 魔術師はそう告げると、泥棒市場から大量のブァリゾープの粉末を買い付けてくると、庭園の中心に魔方陣を設え、ドーマンセーマン状に撒いた。

「清き涙を与えるがよい。それがしいては世界を救うことに繋がるのだ。だがしかし、

そこは、きみの知らない場所でもまたあるのだがね」


 執事はそれから魔法陣のなかで朝から晩まで泣き続けることを日課とした。誰にも何処にも届かぬ思いを抱いて。

 いつしか執事が泣き続けた地面に万巻の書物の代わりに真紅の薔薇が一輪咲いた。

 それは震えるほどの美しさであった。


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