鍵盤ハーモニカ
いつもの学校帰り。今日も私はかばんを肩にしょって鍵盤ハーモニカを利き手で持って公園へと急ぐのだった。
「こんにちは!」
「こんにちは」
魔法使いの服のお兄さんに手を振って走ると、お兄さんも手を振って歩いてくる。鳥はまだお兄さんの肩にいる。
「あのね!今日ね!音楽の時間でね!」
「ああ」
「楽譜みないで『カ○ルのうた』ひけるようになったんだよ!!すごいでしょ!!」
「それはすごいな。カ○ルのうたはどんな曲なんだ?」
ベンチの前につくと、ベンチの背中をどさっとできるとこの上に鳥が綺麗に並んでいた。私はびくっとしたけど、お兄さんはいつものように普通に座ったから私もふつうに座った。かばんも私のとなりに置いた。
「えっとね、カ○ルのうたがーきこえてくるよーだよ!」
私がカ○ルのうたを歌ったらばさばさっとお兄さんの周りにいた鳥たちが勢いよく跳んでいった。
「それは歌詞だな」
お兄さんは鳥が飛んでいったほうを見ながら言った。
「ちがうよ!!鍵盤ハーモニカ持ってるから今ひくんだよ!!」
「……そうか。楽しみだな」
私はお母さんがミシンでつくってくれたくまさんの袋から、鍵盤ハーモニカのいれものをだす。
「……?」
「ちょっと待ってね!」
「急がなくていいからな」
袋は置く場所がないからお兄さんのひざの上に置いた。いれものをあけて、ホースをとりだして鍵盤ハーモニカの左にある穴にさした。
「できたよ!!じゃカ○ルのうたひくね」
「ああ!」
私は鍵盤ハーモニカに両手をおいてホースを口にいれて鼻で空気を大きくすった。