洋服
今日も学校帰りに公園へ寄って肩や指に雀をのせている魔法使いの服を着ているのお兄さんに会いに言ったけど、いなかった。
かわりに、普通のお兄さんがいた。Tシャツとジーンズのお兄さんがベンチに座っていた。
「お兄さん!」
鳩が腕に乗っていたけど私がお兄さんを呼んだらばさばさどっか飛んで行っちゃった。
「こんにちは」
お兄さんの横に座る。椅子のスペースにはまだ余裕があるからかばんを置いといた。
「今日は服が違うんだね」
「管理人さんが服を適当に見繕ってくれたんだ」
なんだか、お兄さんは恥ずかしそうに言う。どうしたんだろう。見繕ってもらう。おばあちゃんがよく言うからなんとなく意味はわかる。
「そうなんだ!よかったね!」
「ああ……」
お兄さんは笑う。けど、嬉しそうだけど嬉しそうじゃない。どうしてだろう。ただでもらうのは嬉しくないのかな。
「なら、もう魔法使いさんの服を着ないの?」
「いや、そうでもない。あと魔法使いさんの服ではない!」
あれ、お兄さんの着ていたのは魔法使いさんの服じゃないのか。
「じゃあ、なんていうの?」
「あれはな、シュバーティスシリーズ最新作で俺たち魔術師にとっての……!いや、なんでもない」
おにいさんはせっかく説明をはじめたのに、はっと我に返ってやめた。せっかく聞いてたのに。
「うーん、どこかのブランドなの?」
「あ、ああ。俺が住んでいた国のな」
「へー」
そのままお兄さんは自慢げな顔をして喋りだした。私にはお兄さんの言っていることがよくわからなくて「うんうん」「へー」しか言えない。
それになんだか、校長先生の長いお話みたいでわからない。眠くなってきた。けど、楽しそうに説明してくれているお兄さんのお話聞かないと。うつらうつらしているとお兄さんは私が眠くなっていることに気付いて「そうだな、君が大人になったらわかるだろう」って鼻で笑った。
「私服には興味ないからわからなくていいよ」
悔しくなったからそう言って、お兄さんの足を蹴る、が避けられて笑われた。
お兄さんについてわかったこと。
・魔法使いさんではなくて魔術師
・着ていた魔法使いさんの服は「シュバーティス」というブランドの最新作