巾着
「こんにちは」
「あ、お兄さん!」
私の声でばさばさと鳥が空へとんでいった。
学校の帰り道。公園でブランコに乗ろうと寄ったら魔法使いの服を着ている片目のお兄さんに会った。
「どうしたの?」
お兄さんはこれ、といって私に折りたたみ傘を出す。
「ありがとう」
「どういたしまして!」
私が受け取るとお兄さんに笑顔でお礼を言われてなんだか少しくすぐったい。
「宿主が君にお礼に、と」
「やどぬし?」
お兄さんの言葉の意味がわからなくて反復してしまったら、お兄さんは笑って管理人さんみたいなものだ、と教えてくれた。それでもよくわからなかったけど知っているふりをする。家に帰ったらお兄ちゃんに「やどぬし」と「かんりにん」はなにか教えてもらおう。
「おお!そうなんだ」
「それで管理人が、君がおれに傘を貸してくれたお礼にこれを渡せ、と言われてな・・」
「お菓子!?」
つい、“お礼”の部分に反応してはしたなく叫んでしまった。
「いや、違う」
お兄さんにすまなさそうに違う、と一刀両断した。お兄さんは巾着の中へと手を突っ込みどこだっけと探し出す。
「あれ・・・」
私は別にお礼のものなんていらないのに、お兄さんは巾着とどこだどこだ、と悪戦苦闘している。
「・・・」
「・・・」
お兄さんは苦虫を噛み潰した表情になって一拍後。
「・・・すまないが、また日を改めても・・・・・」
申し訳なさそうに、顔を青白くしてお兄さんは口を開いた。私はなんだかお兄さんをいじめている気分になってしまう。
「大丈夫だよ!」
だからそんな顔をしてもらいたくなかったから子供ならではの明るさで言った。そうしたらお兄さんはにっこり笑った。