お菓子
今日は学校がないけどいつもの場所へ行く。私は目的の変わった服を着ている人を見つけて突進した。
「お兄さん!!」
私がどしどしと地面を力強く踏んで歩くと近くにいる鳥がばっさばさと慌てて空へ飛んでいった。
「こんにちは」
「こんにちは!!!」
お兄さんはいつもと同じ笑顔で私に挨拶をしてくれた。私も挨拶をしてどすんとお兄さんの隣に座る。ベンチが少し揺れて背もたれの一部にいた鳥が急いで飛んでいった。
「……機嫌が悪いようだが」
お兄さんは慌てて飛んでいった鳥のほうをみる。お兄さんは鳥が飛んで見えなくなると私のほうをむいた。
「どうかしたのか」
「お兄さん聞いて!!昨日の夜ね!」
「ああ」
「お兄ちゃんが私のアイスを勝手に食べたんだよ!!」
思い出すともっとイライラしてきた。頭の中がずずずと熱くなって、お腹の中が重くなる。
「……そうか」
「大好きなアイスだったのに!!お風呂からあがったら食べようと楽しみにしていたのに!」
「ああ」
お兄さんは真直ぐ砂場のほうをみた。けど砂場をみているみたいではなく、ほかのものをみているみたいだ。
「勝手に食べないでって言ったのにまた食べたんだよ!前も私のアイス食べて、お母さんのも食べてね!!」
「ああ」
「私はアイスいっこも食べてないのに、お母さんのアイスを勝手に食べたのは私っていったんだよ!!!」
「……それは、気の毒だったな」
お兄さんはそういって私の頭をぽんぽんと撫でた。
「うん!だからね!はい!!これ一緒に食べよう!!」
私はかばんからだしたものを渡した。
「……これは」
「お兄ちゃんにね!何回もいっても私のお菓子とアイスを勝手に食べるからね!!私もお兄ちゃんのお菓子を勝手に食べるの!!」
「勝手に食べてもいいのか?」
お兄さんは表情を曇らせてお菓子をもらってくれない。どうしてだろう。
「うん!だってお兄ちゃんは私のお菓子を勝手に食べたもん!!」
「……だからといっても」
どうしたんだろう。お兄さんは困っているみたいで、続きをいいかけたけど口をへの字にして閉じた。
「……人の嫌がることはしてはいけない、と日本では教わっているだろう?」
「けど、お兄ちゃんは私の嫌がることいっぱいするもん!!」
お兄ちゃんもお菓子を私に勝手に食べられたら嫌な気分になって、私がどれだけ嫌な思いをしたかわかると思ったのに。
「君がお兄ちゃんと一緒になるのはいけないだろ」
「だって!お兄ちゃんもお菓子を勝手に食べられないと、嫌な気分にならないよ!!それでお兄ちゃんも私と同じ気持ちになってこれはしちゃだめだって気づくはずだもん!!」
「……日本には、人のふり見て我がふり直せとあるだろ」
「それならお兄ちゃんはどうやったら私のお菓子を食べなくなるの?それとお兄さん意味違うよ!!私は人のお菓子勝手に食べないもん!!」
「……そうか。それでも今、そのお菓子を食べればお兄ちゃんと一緒になるぞ」
お兄さんは私の持っているお菓子の袋を指差すとつられて私も持っているお菓子をみる。私が持っているのはお兄ちゃんの大好きなポテチが入っているお菓子の袋だ。正直にいえば、私はこのお菓子はあまり好きじゃない。
「かわりにこれを食べないか、前のクッキーの礼なんだが……」
いいながらお兄さんは魔法使いの服のポケットに片手をいれて、ポケットより大きいお菓子の袋をだした。それは私の大好きなチョコのお菓子だった。私はポテチを食べるよりもチョコを食べるほうがいい。
「うん!!チョコ食べる!!」
「……そうか、よかった」
収集がついていないのは気にしちゃだめなのと、折り畳み傘のお礼はまだ先になりそうです。
お兄さん
公園のお兄さん。
お兄ちゃん
「私」の兄。