折り畳み傘
いったいこのお兄さんはどういう人なんだろうか。
私は隣に立っている人を見上げる。
外国人なのかな?此処らへんでは見かけないであろう変な服を着ている。けどその服の生地は傍目から見ても上等なものだとわかる。あ、思い出した。お兄ちゃんが遊んでいるゲームとアニメでみたことある。魔法使いさんの服だ。
そして綺麗な顔の作りなのに片目を髪で隠している。折角の綺麗な顔なのに、勿体無い。もしかして片目だけ視力が悪いのだろうか。それとも隻眼で小さい頃に囃し立てられてしまって気にしているのだろうか。
考えると、少しだけ悲しくなった。実際はどうしてかわからないけど。ただのおしゃれなのかもしれないのに。なんだか考えるともっと悲しくなった。どうしてだろうか。私と同じ心境のように、空もどんよりとしていて雨はまだ止まなさそうだ。
気付けば、勝手に隣に立っているお兄さんについて考えていたら親近感がわいてしまった。折りたたみ傘がカバンの中に入っているから私は安心だけど、このお兄さんは大丈夫だろうか。今日の天気予報でアナウンサーのお姉さんが夜まで降ったら止むことはないとかそんな似たようなことを言っていた。走って帰るとしてもお兄さんの変な服が濡れてしまうし汚れてしまう。帰ったらなんだか悪い気がする。
「あの、これどうぞ」
考えていたら勝手に体が動いていた。ん、とお兄さんは私の声に反応して振り向く。私は折りたたみ傘をお兄さんに差し出していた。お兄さんはすまなさそうに受け取るか受け取らないのか迷っている顔をしている。そんな、悩ませたくなかったのに。
「私、家近くだし、お兄さんの変だけど綺麗な服が濡れたら大変だよ」
お兄さんの手を取り傘を握らす。
「それじゃ、ばいばい」
私はお兄さんがなにか言い出す前に公園からでていった。