愛のカタチ
虐待を含む話ですので、苦手な方はお控えください。
母はかわいそうな人なんだ。
だから僕が、
僕がお母さんの愛を全部受け止めてあげなくちゃ駄目なんだ。
「ゆう君、ゆう君はお母さんのこと好き?」
お母さんが僕の顔を両手で包み込みながら聞いてくる。
「大好きだよ」
いつもの、決められた返答。それでも、
「ゆう君、ゆう君、あの人みたいにお母さんを置いていかないで」
頬にびりっとした痛みが走った。お母さんの長い爪が頬に食い込んでいく。
「お母さん、大好きだよ。僕はずっとお母さんと一緒にいるよ」
そうだ。お母さんを置いて行ったお父さんの代わりにどんな愛情も、全部受け止める。
それが、僕が決めたこと。いや、決められたこと。
どんな愛情も・・・
「ゆう君」
バシッ
「っつ」
「ゆう君、昨日はどこに行ってたの?」
「学校だよ。お母さ・・」
バシッ
「ゆう君、お母さんとずっと一緒だって言ったじゃない。どうしていなくなるのよ。どうして、どうしてぇ!」
お母さんが半狂乱になっている。こんな時はなにをいっても無駄なのを僕は知っている。ただ耐える。母の狂った愛情から。
「愛してる」
「大好きだよ」
そう答えながら、母が落ち着くのを待つ。愛情という名の暴力に耐える。
この時に、決して謝ってはいけない。謝りはお母さんにとったら裏切りの行為。だから、愛を込めた言葉だけを送り続ける。
「大好きだよ。置いていかないよ。ずっと側にいる」
「ずっと・・・?ずっとよ?」
お母さんが元に戻った。やっと終わった。
「あぁ、ごめんね。ごめんね」
泣きながら傷だらけの僕を抱きしめた。
「ごめんね。愛してるの。愛してるのよ。ごめんね」
いつもと同じ。僕を傷つけ、泣きながら抱きしめる。
「僕もお母さんのこと、愛してるよ」
「本当ね?」
「本当だよ」
お母さんが笑顔になり、僕の傷を眺めた。
「これは、残しておきましょうね。お母さんのものだっていう印」
「そうだね、僕はお母さんのものだよ」
これから先、ずっと、永遠に・・・
読んでいただきありがとうございました。
最近虐待が多いのでそれを題材にしてみました。
結局後味の悪いものになりましたが、お気に召した方がいれば幸いです。