夢のなかで
夢を見ていた。
ここは何所だろうか、私は周りを見わたした。そこには、自分の手を目の前に持ってきても見えないくらい深い漆黒の闇があった。そして、聞こえてくるのは自分の息の音と、心臓の音だけ。
静寂の中その音は何とも言えない不安と恐怖をあおる。恐怖からか急に耳鳴りが始まったと思うと、
『光と闇がまじるとき世界は終わる・・・・。アゼイリア戦ってはいけない。』
後ろから母の優しい透き通った声が聞こえた。
「母さん!!」
とっさに後ろを振り向いて、片足を出した瞬間何か液体を踏んだ様なパシャッという音がした。
「えっ!?」
何も見えないと分かっていてもつい下を見る。すると、さっきまでなかった卵の腐ったような、生き物が
腐ったような、吐きそうな、言葉に表わせないような異臭がした。あまりの異臭に頭痛がする。
なにこの臭い。気持ち悪い・・・。
バシャバシャと音を立てながら後ろによろめいたとき、強い突風が吹いた。私はバシャーンッと大きな音をたてて尻餅をつく。突風がおさまったと思えば今度は、急に周りがバッと光って明るくなる。
まぶしい!今まで闇の中にいたので急に明るくなると、目が慣れ視界が開けるまで時間がかかる。
だんだん光に慣れてきて、少しずつ目を開け周りを見た・・・・・・・。
!?
あまりの光景に絶句する。何よこれ。どうなっているの?私の目の前には無数の死体がころがっている。
死体は皮膚がはがされているもの、目や内臓が飛び出しているものもあれば、グチャグチャに潰されているものもある。
一番酷いのは、人の原型をとどめず何もかも切り刻まれてめちゃくちゃになった、肉の塊のような死体だ。さっきからしていたとんでもない異臭はこの死体たちのものであった。
私はまさかと思って下を見る。
自分の足が足首のあたりまで血に浸かっていた。
尻餅をついたからか、臍のあたりまで服が血で赤黒く染まっている。
もう最悪。
吐きそうな異臭はするし、そのせいで頭痛はするし、いろんな死体が無残にころがっているし、6割くらいは体に血がついている。こんな夢とっとと覚めてほしい。さめろ。さめろ。さめろ。さめろ!!!
『アゼイリア・・・・・・。』
また後ろから母さんの優しい透き通った声がした。
「母さん!」
後ろを振り向こうとした。そのとき、視界が歪んだ。
やっぱまだ夢さめないで。母さんに会いたい!お願い。お願い。お願いだから・・・。
今にも目が覚めそうな状態で後ろを見た。そこには微かに母さんの姿が見えた。
母さん・・・・。
けど私はその母さんは私の母さんの姿をした別人に思えた。
あなたは誰?
そしてだんだん視界は闇に染まっていった。