精歌
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「あの、璃空さん」
榛色の瞳に尊敬の光を宿したタナサが少し後ろを歩く璃空を振り返る。
「何、タナサ?それと呼び捨てでいいよ、私も呼び捨てだし。第一、タナサいくつなの?」
タナサよりも頭一つ分は背の低い璃空がタナサを見上げる。
「私は、17だけど」
「17?やっぱり私より年上じゃない。私は14だもの。呼び捨て、決定!さん付けたら、返事しないからね」
あと、カンナも呼び捨てでいいからね。
明るい声につられるようにタナサは頷いた。
よし、と満足げに璃空は笑った。
「それで、用は何?」
数度躊躇ったあと、璃空の笑みに促されるようにタナサは尋ねた。
「あの、あの歌は…?」
「歌?あぁ、精歌よ」
「精歌?」
不思議そうに首を傾げるタナサに分かりやすいように説明をしていく。
「精歌は正しくは“精霊に語りかけし為の呪歌”という意味なの」
世界には、光・闇・風・地・火・水・木の7属性の精霊が存在する。
本来、滅多に人と関わりを持とうとしない精霊の力を借りる為に世界にはいくつかの術が存在する。
その内の1つに力を込めた呪歌で精霊を呼び、語りかける方法がある。
しかし、本来人とは異なる言語を扱う精霊と語り合う為には一定の形が必要となる。その為に創られたのが精歌だ。
精歌の威力と発動までの速さは精霊の力を借りる術の中でも最上位に位置する術といえる。
他の術で精歌と同様の効果を及ぼすには数倍の時間と手間が必要となる。
しかし、その強さの割に世間に精歌の名が広まっていないのは詠える者がごくわずかしかいないからだ。
精歌を詠えるかどうかは、生まれつき定められている属性の強さがある一定のレベル以上であるかどうかで決められる。
そのレベルに達する者が滅多に居ないことと、そのレベルに達していても教えられる者が少ない事が精歌の詠い手が少ない理由となる。
「…のが精歌。まぁ、精霊との共通語だと思えばいいわ。あまり威力はないけど、発動は速いほうかな?大体、こんなとこかな?分かった?」
「はい!精歌って、凄いんですね。それにすごく綺麗でした」
璃空の説明を一言も逃すまいとしていたタナサが聞き終わったあと感慨深げに呟いた。
「そう?ありがとう」
(精歌の説明だから、あれくらいでいいわよね?資格とかの話なんて、自慢以外の何物でもないし。威力は・・・あまりないわよね、・・・歌によるけど)
「どうしました、璃空さ」
急に黙り込んだ璃空に心配そうにタナサが声を掛けた。
「何でもないよ、タナサ。心配してくれてありがとう」
にっこりと輝くような笑みを浮かべる璃空の顔から、僅かに頬を赤くしたタナサが目線をずらした。
精歌を教えたのは誰?