後始末
感想を頂いたおかげで執筆速度が上がりました。
一人でも多くの人に楽しんで頂ければ、幸いです。
「さてと、カンナ、妖鬼どうにかして。このままじゃ臭くてしょうがないじゃない」
璃空より背の高いカンナに臆することなく、指を突き付ける。
妖鬼の死体は、簡単には消えない。かといって放置しておくと時間が立つにつれ、周囲の物を妖気で蝕み、枯らしてしまう。中には妖気に蝕まれ、妖鬼とかす生き物も少なくない。
そのため、妖鬼を倒した者は、その後始末までが義務付けられている。
「…俺が剣術しか出来ないって知っててそんな事言うか、普通」
「あら、そうだったかしら?」
璃空は可愛らしく首を傾げ、笑ってみせる。
「……俺が悪かったです。どうか妖鬼達を消して下さいませんか、璃空様」
僅かに顔を歪ませながら言ったカンナに璃空は満足げに笑う。
「了解」
う〜ん、と少し悩むように璃空は妖鬼達の死体を見回した。
すうっと息を吸い込むと目を閉じ聞いたことのない不思議な響きの歌を詠い出した。
歌に合わせるように死体の周りに青白い炎が現れ、死体を焼き付くした。
「相変わらず、歌は綺麗だな」
感心したようにカンナが手を叩く。
「それは、嫌味?カンナ」
「あっ、あの、ありがとうございます」
深々とタナサは頭を下げた。
「気にしないで。大したことじゃないから。そうだ、1つ尋ねてもいい?」
「もちろんです!私に答えられることだったらなんでも答えます」
勢い込むタナサを呆気に取られたように見たあと、弾けるように璃空とカンナは笑いだした。
「大したことじゃないんだから、そんなに張り切らなくてもいいよ、タナサ。何処かこの近くにいい宿ない?」
くくっと苦しげにしながら、顔を真っ赤にしたタナサに璃空は尋ねる。
「宿ですか?だったら、うちに泊まって下さい!」
う〜ん、と軽く首を傾げる。
「いいの?遠慮なくお邪魔するよ」
「はい!」
こくこくと何度も首を縦に振るタナサに、二人は再び込みあげる笑いを押し殺した。
「よろしくお願いします、タナサ」
静かに運命の歯車は回り出す。