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井戸端の文学少女  作者: つんどら
追加品
6/8








 ぽきんと音がして、一瞬彼女の腕が指が折れたのかと思った。

 反射的に振り向くと、どうやら違うようで安心する。なにやら鉛筆を握り締めて手を震わせ、珍しく眉根を寄せて苦悶の表情をしている。


「どうしたんですか?」

「いえ……親に手紙を書こうと思って。……どうも里から出ている方もいらっしゃるそうですから、届けてもらおうと」


 そう言って、若干恨みがましい目を向けてくる。ああ、一生帰れないと言った覚えがあるな。

 全然知らないので適当に言ったのだが。まあ、帰す気もないし間違ってはいない。


「……実を言うとですね」

「はい」

「手紙というものをまともに書いた事が無いので。大変困っています」

「なるほど。では試しに私への恋文から練習しましょう」

「気を抜くとそういう事言いますね、あなたは……」


 最初は嫌がっていたが、暫く粘ったら書いてくれた。


 きみにより 思ひならひぬ 世の中の 人はこれをや 恋といふらむ


 とりあえず小躍りしたくなるほど嬉しかったので額に入れて飾ったら泣かれた。泣き顔も可愛らしいのだが、胸が苦しくて見ていられなくなる。

 仕方ないから外したが、この紙は大事にしまっておこう。







 ――きみにより 思ひならひぬ 世の中の 人はこれをや 恋といふらむ


 ……あまりにしつこいから、適当に思い出した和歌を引用して書いたのだけど、まさか額に入れて飾られるとは思いもしなかった。しかも私では届かない高い場所に。

 訳すると、“あなたのお陰で知ったこの気持ちが、世に言う恋というものなのですね”みたいな感じである。改めて読むと嵌りすぎて顔が熱い。ああもう、在原業平が憎い。あの色男め。


 幸いというか、泣いたら流石に額を外してくれた。慌ててどうしていいか分からない様子の薄が見られたのでよしとしよう。








新ジャンル「和歌デレ」


きみにより~は在原業平。

何か現代でも通用しそうですよね。絶対こういう歌詞ある。



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