料理上手な夫とメシマズ妻の、ほのぼのご飯。3
夫が料理している姿を見るのが好きだ。
広い背中、チラリと見える集中した横顔、引き締まった尻。
「尻は関係ないでしょ」
「え? 声に出てた?」
「めちゃくちゃ漏れてた」
「ふおぅ。とうとう魔法が使えることを自白したのと思ったよ」
夫は魔法が使えると思っている。
だって、お米と舞茸と人参とささみを炊飯器に入れたら、舞茸おこわが出来ている。
かぼちゃをチンして潰して、なんかよくわからない白い塊とか粉とか、なんか茶色いシワシワしたのとか色々入れたなと思ったら、かぼちゃサラダが出来ている。
今は、鮭とでっかい胡瓜みたいなやつを鍋に入れたなと思ったら、お吸い物が出来上がろうとしている。
これを魔法使いと言わずしてなんと言う。
「出来たよ。あ、食器準備してくれたんだ。ありがとうね」
夫は、めちゃくちゃ私を褒める。
今も。
出した赤いお皿がかぼちゃサラダの色を引き立てていいねとか、お吸い物だから黒塗りの碗が合うよねとか、今日はおこわがメインだから大きなご飯茶碗が良かったんだよね、流石分かってるね、とか。
「いただきまーすうんまぁぁぁい!」
「口に入れたばっかじゃん、早いよ」
夫がクスクスと笑いながら、おこわを一口。
ゆっくりと咀嚼して、ふわりと柔らかく微笑む。
「うん、美味しく出来てるね」
夫は淡白だなぁと思う。
飛び上がるほど美味しいのに、いつもこんな反応だ。
「もっとこう、全身で美味しいを表現していいんだよ?」
「柚が全身で表現してくれるから、俺はこのくらいの反応でいいんだよ」
「むーっ」
□□□
俺たち夫婦の関係は、ちょっと変だと言われることがある。
付き合っていたころ、お家デートで彼女の壊滅的な料理を目の当たりにして、包丁を奪い取った……というか、凶器を手放すように説得した。
それ以来、料理は俺の担当だ。
「うんまぁ! おこわもちもちしてるー!」
口を大きく開けて、ご飯をバクリと頬張る妻。膨らんだ頬がハムスターっぽくて可愛い。
満面の笑みで、いつでも「美味い」と言ってくれる。
「これ、なんだっけ?」
お吸い物に入った冬瓜をツンツンしていたので、苦手だったかなと心配した。
「とーがん! うまぁい!」
「ん、よかった」
――――あぁ、幸せだなぁ。
☆終わり?☆




