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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。

読書バカ日和

作者: 永進
掲載日:2026/04/10

ハマちゃんとスーさんみたいな。


「おはようございます、会長」

「うん。おはよう」

新入生に、私は微笑みながら返す。

サッ、と私は相手の服装をチェックする。


スカートは、短くない。

ネクタイも、曲がっていない。

勝手に衣替えも、していない。


「今日も頑張ろうね」

笑顔で口にする。

相手は、顔を赤くしてうなずいてくれる。


私の通う高校は、お嬢様学校。

2026年、令和8年にしては、珍しいかもしれない。女子高、勉学も部活も全国トップクラス。


『勉強は若者の仕事』

というのが、ここの生徒や教師の思想。


本当に、息が苦しくなる。

けど、私は生徒会長だし。


毎日の、朝の挨拶活動。

今朝も頑張らないと。


「あっ、せんさん、おっはー」

「…色々と突っ込みたいんだけど」

呟く。

いい笑顔なのは、いいんだけど。


「今日も頑張りましょ、せんさん」

「まず、せんさんは誰だ」

「先輩だからせんさん、会長って呼ぶのも堅苦しくない?」


相変わらず、能天気な奴。

私の隣に立つ副会長は顔を赤くしている。さっきの生徒みたいに、照れている訳ではない。カンカンに怒っているのだ。


「スカートも短いし、ネクタイはそもそも着けてないし、勝手に衣替えしてるし。まだ4月だよ?」

「だって暑いもん。

じゃねー」

ヒラヒラ、と手を振りながら歩いていく。


お嬢様学校じゃなければ、隣の副会長は怒鳴り散らしていただろう。

品性があってよかったな、全く。


「やれやれ」

ため息を吐き、空を仰ぐ。

今日も晴れている。ウグイスも陽気に鳴いてるし、私にとってはいい天気だ。




「勉強は若い私たちの仕事だ」

第一声。

ふかふかのソファーに座る副会長は、真面目言う。

茶道部で、勉学は常に学年2位。凛々しく、真面目で、顔つきはイケメン。最近の困り事は新入生に毎日のように告白されることらしい。私もそれを困り事にしたいものだ。


『せんさん、今日は図書館行きましょ、図書館』

いかんいかん、アイツの顔が浮かんで来てしまった。


昼休み。

広い生徒会室で、会議をしている。

参加しているのは、生徒会役員全員。


やはり、皆真面目な顔をしている。


ああ、息が苦しい。換気をしたい。


続けて副会長は、

「来月は、ゴールデンウィークというものがある。今年も宿題はたくさん出してもらおう。

異論はないな」


私以外の役員は全員うなずく。


『勉学は若い人の仕事』

はあ。


「会長、それでいいね」

「う、うん?」


『ゴールデンウィークはいっぱい本を読も、せんさん』


参ったな…。


宿題の量が多いと、あの子と遊べない。


「特に、あの新入生はふぬけているじゃないですか」

2年生の役員が言う。

「今日も服装はだらしなく、授業中もいつもいびきをかきながら寝ているらしいんですよ。

本当、どうして入学できたのかしら。

いっそ退学できません? 会長」


「いや、セイちゃんは、学校のムードメーカーというか」

「会長? 何か言われましたか?ちょっと私の耳が悪く」

「何でもない、何でもないよぉ」

私は机に突っ伏す。


すぐに、私は真面目に、

「今年は、生徒たちに自主的に頑張ってもらおう。

最近、本で知ったけど、勉強をしなさいと言う親の子は勉強が嫌いになりやすいらしい。

そもそも、ここの高校は全国トップクラスで、宿題なんか出さなくても勉強を進んでするんじゃないのかな?

どうかな、今年は宿題をなしにしよう。その代わり、連休明けに抜き打ちテストをしてもいいから」


「流石会長だな、うむ。素晴らしい」

「ははは…」

「しかも本とは。余裕があるんだな、流石会長」

「ははは…」

はあ。




「連休最高♪今日は本屋で本を買って、私の家で読みましょ、2人きりで」


「せんさん、決まりました?」

ニコニコしながら聞いてくる。

私は申し訳なさそうに、

「どんな本を読めばいいか分からない。

ただ読むのと買って読むのは違うような気がして」


「そうですねー。

読書を、せんさんはどうしてするんです?」

「どうして?

楽しみたいから、かな。

勉学は若い人の仕事、両親からそう言われて育って、今は学校の人たちも言うけど。

私は、本っていうのを小さかった頃から読みたくて。

物語とか、知らない業界とか、そういうのを知って楽しみたい」


「じゃあ、ライトノベルとか買ってみましょうよ。好きな作家とか、普段読まないような本を冒険して買うのもいいかもっ」

「ライトノベル? ライト兄弟と関係ある?」

「違います、まー、小説の軽い版、かな。名前を聞くのは初めてですか。

ライトノベルって言いますっ」

「へえ、流石セイちゃん」

「人気作家ですから、えっへん」

得意気な顔で胸を張られる。ぺったんこの胸が自己主張をしてくる。まあ、私もないけど。


「流石、人気作家」

「そうです、人気作家ですよ。お嬢様学校に推薦で入れるくらいに人気なんですよ」


本を数冊買い、書店から出る。

今日は、2人とも私服。

私服、先月、つまり4月のはじめくらいに、私服というものを私は初めて買った。


この、セイちゃんと出会って。


人気作家の先生だから、セイちゃん。

学校の人たちは、読むとしても夏目漱石やドストエフスキーといった昔の作家たちの作品だから、セイちゃんのことは知らないけど。


私は、たまたま知っていた。

本に、興味があったし。


「よし。

じゃ、一緒に行こ」

さりげなく、手を握ってくる。相変わらずの能天気顔で。


ドキドキするから、やめてほしいなぁ。

顔を赤くし、私はうなずく。


「連休を宿題なしにしてよかったですね、会長」

「なっ、なぜそれを」

「ふふふっ」


余計、顔を赤くしてしまう。



ありがとうございました!

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