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14. 村長の娘

 あまり気の晴れない散歩をして帰ると、家から楽しそうな笑い声が聞こえてきた。ロベルトの声だ。妙に大げさで、ゆっくり話している。クリスと話す時のテンションじゃないな。

 さては。


 家に入ると、予想通りロベルトは女の子と話していた。歳はジェイたちよりも下だろう。十三、四歳くらいかと目星をつける。

 膝下丈のスカートに、シフォン生地の淡い青色のトップス。麦わら帽子を被っていて目元は見えないが、柔らかな雰囲気だ。縁側の外に立ち、少女はロベルトのジョークにぎこちない笑みを浮かべていた。

 見ない顔だ。村の外から来たのだろうか。

 ジェイはそう察しをつけた。少女は村人ほど体が浮腫んでいないのだ。


「Hi」とジェイが声をかけると、縁側に胡座をかいていたロベルトが振り返った。ロベルトは久しぶりに見る楽しそうな顔でジェイに話を振った。


「よ、ジェイ。こちら、久美。村長さんの娘さんだって」

 久美と呼ばれた少女は、ジェイにお辞儀をする。ジェイは久美に近寄って、握手の手を差し出した。一瞬ピクっとした久美は、おずおずとジェイの手を握る。


「久美、大丈夫だよ。コイツは食ってかかったりしないから」

「あ、いえ、そんなつもりじゃ!」

 久美は顔を真っ赤にさせて否定する。それを可愛いなあという顔でロベルトは見ている。

「はじめまして。ジェイです」

「久美です」


 たどたどしいながらも、英語で話してくれるのが嬉しい。部屋の隅に座っているクリスも、ちらちらと久美の方を見ている。


 やっぱり女の子がいると華やぐなあ。


 ここ最近ずっと野郎どもとつるんでいたジェイは、思わず頬が緩む。もちろん変な意味ではない。単純に、野郎はむさ苦しいという話だ。可愛いけど、ジェイは少女愛好家ではない。


「久美はどうしたの? お使いかな?」

 わかりやすく発音しながら、ジェイは聞く。それを聞いたロベルトが大笑いした。


「あっはっは! ジェイ、お前久美のことティーンだと思ってるだろう。久美は俺らと同い年だよ」

「は? え? 中……えっと高校生じゃなくて?」

 さすがに中学生と言ったら失礼だろうと、慌てて単語を切り替える。

「いえ、二十一歳です。すみません……」

 久美は申し訳なさそうに謝る。

「いや! ごめん! 僕が悪かった!」

 ジェイは慌てて謝った。まさか二十歳を超えているとは思わなかったのだ。どう見ても……

 ジェイは思わず胸に目線がいきそうになったのを無理やり逸らした。ロベルトがにやにやしているのが見える。


 こいつ、面白がってやる。


「ごめんね、俺ら無神経で。東洋の女性は若く見えるって聞いてはいたんだけどさ、こんなに肌がきれいだと思わなくて」

 そう言ってロベルトは久美にウィンクする。久美は顔を真っ赤にして髪の毛をいじった。


 こうやってさりげなく褒められるのがロベルトのすごいところだ。ジェイには逆立ちしても真似はできない。

 モテるやつはこれだから、なあ? と同意を求めてクリスを見るが、クリスは見ていない振りをやめて久美をじっと見ている。


 まったくどいつもこいつも、とジェイは肩をすくめた。横目でしっかり久美の姿を捉えている自分を棚上げして。

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