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教宗編 短編 墓

※「もしも」のエンディングです。


◆八大蛇討伐成功

亜香里と教宗は、仲間の力を糧に愛をもって八大蛇をこの世から消滅させた。

そして、近の「創造」の力で美しい世界が戻り、近は、永遠の眠りに就いた。

「終わったな。天子。」

「教宗。」

それは、亜香里と教宗の別れを意味していた。教宗の補戦玉には、ひび割れが見られたが、まだ教宗の小指に留まっていた。

それを使用し、教宗は過去へ帰ることになった。


◆別れ

亜香里は、教宗の帰還の日、その教宗に抱きついた。

「これが、最後なのね。教宗と抱き合えるの。」

「そうだ。だが、約束通り、この美しい世界という私が、いつでも天子を抱きしめる。絶対に離れない。」

「うん。私も、約束通り、教宗を探すから。」

「ああ、また会おう。天子。息災でな。」


◆時間転移

補佐神読月の力を展開し、教宗は1,000年前に帰った。

亜香里は泣いた。教宗という世界に抱きしめられながら。

教宗は込み上げてくるものを必死で抑えた。


◆過去

黒の補戦玉は粉々になった。

教宗は、過去にたどり着いた。真新しい「大伴命前神社」がその教宗を迎えた。

亜香里との思い出が溢れる教宗。

「天子。」

そんな教宗の目の前に定家が。

「教宗?教宗だ!おかえりなさい!!」

宮司の格好をし、少しだけ大人びた定家は、教宗に駆け寄った。

すると、神社に併設されている住宅から、女性と子供が出てきた。

「奥方?そして、定家の?」

「そうだよ。かわいいでしょ?」

「ああ、そうだな。」

定家は、自らの妻に教宗を命士仲間だった男として紹介。愛想よく挨拶してくれた定家の妻のお腹は大きかった。

「もうすぐ、また子供が産まれるのか。」

「うん!楽しみだよ!!」


◆現代

朝陽は、先祖である定家に戦いが終わったことを一朗太と共に報告するため、墓参りをした。

すると、前に来た時にはなかった古ぼけた墓が物部家の墓の隣にあった。

「父さん、こんな立派な墓、あったっけ?」

「なかった筈だけどなぁ。」

2人は定家に報告が終わるとその古ぼけた墓を見回した。

そして、朝陽と一朗太は、声を揃えて「文室教宗!」と叫んだ。

後日、朝陽は亜香里に墓を紹介。亜香里はその墓の前で座り込んだ。

「教宗っ。」

それからと言うものの、亜香里は時間を作っては教宗の墓参りをした。


◆異分子

教宗は、「自分の時代」の生活を再び始めた。「文室塾」を再開させ「避難所塾」を思い出す。

教宗は、わかっていた。「亜香里の時代」に留まろうと、「自分の時代」に帰って来ようと、「時間転移」を一度でもした者は、どこにいても「異分子」だと。

ここからの自分の使命は、「亜香里の時代」に影響のある行動は厳に慎む事。

補戦玉は失った。八大蛇は「亜香里の時代」で消滅した。しかし、自らは死ぬまで「命士」として生きることが課せられている。

そんな事を考えながら、新たな塾生に高度な知識を授けていった。


◆問い

その日、教宗は、定家に招かれ守常の遺体の前に来ていた。白の補戦玉のおかげなのかまだ守常は八大蛇封印直後の綺麗な体で横たわっていた。

「1,000年後って、どんな感じだったの?」

そんな中、定家に教宗は問われた。

「それを話すのは、条件がある。」

「え?どんな?」

「私が1,000年後に行く前の定家の気持ちを聞いた後でもそれを持ち続ける事が条件だ。」

「うーん、わかった!!」

教宗は、定家の子孫である一朗太や朝陽の話から始め、守常が生き返り、一之丞が転生した晃と出会い、忠通は魂として存在し続け、光輝という者の体を借りつつ共に戦ったと定家の見知った者の話題を伝えた。

「命士、5人揃ったんだね。」

そして、新たな仲間、妃果梨と暁の話もし、最後に未来の天子、亜香里の話を始めた。

「天子、いてくれたんだ!」

「そうだ。はじめは、天子を拒否したんだが、立派に天子を務めてくれた。」

そこで、教宗はうつむく。

「本当に、立派、だった。」

その目には涙。定家は初めて見る教宗の涙にうろたえた。

「ど、どうしたの?」

「天子、亜香里っ。」

その涙を振り切り、教宗は、続けた。

「私は、天子と愛し合った。しかし、別れて来た。」

「辛かったんだね。話、聞かせてくれてありがとう。僕、頑張って一朗太や朝陽までたどり着くようにするよ。」


◆生まれ変わり

亜香里は、晃と久しぶりに顔を合わせていた。

「ねぇ、晃、『生まれ変わり』ってどんな感じなの?」

「未だに一之丞って奴の気配は、感じたことないな。」

「そう、なんだ。」

「教宗の件だろ?」

「うん。」

「あいつもよ、すげぇ博打に出たよな。まぁ、教宗の生まれ変わりとやらに、お前が会える事を願うことしか出来ねぇけどな、俺は。」

「一朗太さん、朝陽、晃に気を使わせちゃってるね。ごめん。でも、ありがとう。」


◆死

教宗は文室塾の塾長として生きた。常に亜香里の存在を心で抱きしめながら。

しかし、その日々もある日、終わりを告げる。

「ああ、私の命は、ここまでだ。」

そう呟いた。更に、心の中で呟きを続ける。

「天子、亜香里、今、会いに行く。」

文室教宗は、息を引き取った。

定家は、そんな教宗を弔った。そして、文室塾の歴代の塾生の有志が物部家の墓の隣に教宗の墓を建てた。


◆墓

その日、亜香里は何度通ったかわからない教宗の墓参りに行った。すると、そこに自分より少し年上と推測される男性が立っていた。亜香里は声をかけてみた。

「あ、あなたは?」

振り返った男性の顔を見た瞬間、亜香里はその男性に抱きつく事を止められなかった。問いへの返答をする前に抱きつかれたその男性は、戸惑うことなく亜香里を受け入れた。そして、こう言った。

「やっと、会えたような気がする。僕が産まれてから求めてきた僕の心の欠片に。」

改めて、亜香里はその男性の顔を見た。待ち望んだ男の顔とは似ても似つかない顔だったが、惹かれる心は、間違いなくその男性が待ち望んだ男だと確信させた。

「私、日下部亜香里。」

「僕は、長谷川洸。」

「はせがわこう?」

「うん。」

話を聞くに、洸は、教宗の墓を偶然見て、何か強烈な縁を感じたと言う。

「私も、私も探してた。あなたの事。」

そして、亜香里は泣いた。洸は、右手でその涙を拭ってやった。

「亜香里さん、よければ僕とお付き合いしてくれないかな?」

「勿論だよ。洸さん。」

今度はお互いに抱き合う亜香里と洸。教宗の墓は、いつになく清らかに見えた。

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