13.『おばあちゃんの原宿』
榊は、食材を冷蔵庫に入れると、副社長の朱美に電話した。
「副社長。ありがとうございました。先方に凄く喜ばれました。感動してました。提灯送る地域もあるとか。きっと、灯籠の替わりでしょうね。」
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 =========================
夏目房之助・・・有限会社市場リサーチの会社の実質経営者だった。名義代表者は、妻の夏目優香。
夏目優香・・・有限会社夏目リサーチ社長。
夏目朱美・・・有限会社夏目リサーチ副社長。
笠置・・・夏目リサーチ社員。元学者。元経営者。
高山・・・夏目リサーチ社員。元木工職人。
榊・・・夏目リサーチ社員。元エンパイヤステーキホテルのレストランのシェフ。元自衛隊員。
久保田管理官・・・警視庁管理官。テロ組織対策室をサポートしている。
矢野警部・・・テロ組織対策室勤務。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
※夏目リサーチは、阿倍野元総理が現役時代に設立された会社で、警視庁テロ対策室準備室が出来る前に出来た。スーパーや百貨店の市場調査会社が、「隠密に」テロ組織を調査するのに適していると、副総監が判断し、公安のアシストとしてスタートした。
夏目リサーチは、民間の市場調査を行うのと併行して、危機的状況を調査する、国家唯一の調査機関である。
午後10時。浅草寺裏手のビル。夏目リサーチ社分室。
榊は、食材を冷蔵庫に入れると、副社長の朱美に電話した。
「副社長。ありがとうございました。先方に凄く喜ばれました。感動してました。提灯送る地域もあるとか。きっと、灯籠の替わりでしょうね。」
「ありがとうは、こっちの方よ。わざわざお客を連れて来た、って喜んでいたわ。」
変な顔をしている笠置と高山に榊は手短に話した。
「ふうん。そんな習慣あるんだ。今は時代が違うからね。」と、笠置はあっさり認めた。
「何々。今回は、『特殊』でもないな。『12月15日未明、被疑者は、高速道路の路肩において、被害者と口論となり、被害者が自動車に手を掛けているにもかかわらず、同自動車を発進させて走行し、被害者を転倒させて怪我を負わせて逃走したものである。』煽り運転かな?ドライブレコーダーのデータは、運転免許証データにもお名前カードデータにもない。カチャカチャデータの出番だな。」
笠置は、ドライブレコーダーのデータと、通称『市場調査データ』を比較するようにシステムにセットした。
15分で、あっさりマッチングした。
「公安で監視中の『元赤〇派』の男と会ってるな。場所は『高岩寺』か。」
「高岩寺と言えば、東京都豊島区巣鴨にある曹洞宗の寺院。 山号は萬頂山。本尊は地蔵菩薩。一般には『とげぬき地蔵』の通称で有名だ。」と、高山が言った。
「詳しいね、高山さん。」と笠置が言うと、高山は照れて、「ありがとうございます。でも、巣鴨じゃ有名ですね。『おばあちゃんの原宿』だから。」と、返した。
「こういう所は、かえって目立たないのかもね。」と、電話を終えた榊が言い、夕食(夜食)の準備にかかった。
笠置が警視庁テロ対策室に電話すると、出たのは矢野警部だった。
「久保田さんは、今留守です。」
笠置は、マッチングシステムのデータ解析の結果を報告した。
「成程。聞き込みさせましょう。『元赤〇派』の男か。芋づるになればいいけどな。」
そう言って、電話は切れた。
「あいつら、まだ生きているんだな。」「生き残りだね。」
笠置の声に高山は「生き残りだね。」と繰り返した。
「もう少しでクリスマスだね。」「靴下用意した?」と笠置が言った。
「もう、そんなトシでもないよな。」と榊が返した。
「でも、一足早く、『七面鳥』ですよ。」
香ばしい匂いが辺りを覆い尽くした。
―完―
このエピソードは、既に他のサイトで公開した作品ですが、よろしければ、お読み下さい。