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第2ー4話 『花塔マサミ』

 夕暮れ暗くなり始める街。ファミリーレストランマリアの看板をライトが照らす。

 テーブル席、学校帰りのアズハとショウコ。アズハが俯きながらスパゲティをくるくると回す。ショウコがピザに手を伸ばそうする。

「救えたと思ったんだ……。けど__」

 自分自身に怒りを噛む。脳裏に浮かぶのはハルキの笑顔。しかし、ハルキ死亡の事実を突き付けるニュースがそれを塗り替えていく。

「救えなかった。」

「アズハのせいじゃないよ」

「そんなの関係ない!」

 アズハの激昂に店内が一瞬凍りつく。

「一人の命が……命が……」 


 すっかり真っ暗になる空。押しボタン式信号機のボタンをゆっくり押すショウコ。『おまちください』に表示が切り替わる。

「じゃあ、私こっちだから」

「あぁ、うん。さっきは大声出してごめん」 

「びっくりして心臓飛び出るかと思ったよ〜」  

 ショウコがアズハを気遣い明るく振る舞う。

「今日は付き合ってくれてありがとう」

「友達だからね!」

 信号が青に切り替わる。手を振り、ショウコとお別れする。

 自宅までの帰路を再び歩き出すアズハ。

(ウジウジしてたって仕方ない。もっと強い人間にならないと!)

 前方から酔った女性が男性に支えられながら歩いてくる。

(ん? あの人は…)

「レイさん!?」

「あ〜ら、セシィちゃんじゃないの〜」

 男性の肩を貸してもらい若干前屈みになるレイ。胸元が程よく見える。

「あなたもういいわ」

「え!?」

 介抱してくれていた男性をシッシッと帰らせる。

「こんなとこで何してるんですか?」

「ポイント稼ぎよ〜」

「アビルですか?」

「ん〜違う! 違う!」

「エッチよエッチ! セックス!」

「言ったでしょ〜、私のキーポイントは『快楽』だって」

(そうか、なにも戦わずともポイントを増やせる方法もあるのか)

「ね〜せっかくだしヤる?」

 ふらつきながらもアズハを背後から抱きつく。そのままアズハの微乳を揉みしごく。

「なっ、何をですか!」

 アズハの頬を赤くなる。

「また〜とぼけちゃって〜。私、女の子もいけちゃうタイプだけどどう?」

「やめてください!」

 恥ずかしがる己を食い止める。

「今それどころじゃないんです……」

 悲しい表情を見せるアズハ。

「?」


 自動販売機のある小さな休憩場。ベンチに座る2人、レイがチェイサーとしてペットボトルの水を飲む。

「強くなりたい〜? 何それ?」

「精神的にも体力的にも強い方がいざって時に後悔しないだろうって」

「いざって時っていつよ〜」

「それは…」

「未来のことなんて分かんない」

 煌々と光る自動販売機。

「けど、今は自由よ。やる事やって後は好きな事をヤればいいのよ」


(って言われても__)

 校舎を周り、様々な部活を見学するアズハ。

(私の好きなものって何だろ…)

 ふわふわしながら廊下を歩く。

「アズハ〜」

 後ろからショウコが声をかけるがアズハは気づかない。

「アズハー!」

「アズハッ!ハッ!ハッ!」

「! ショウコ……」

「どうしたのぼーっとしちゃって」

「今、好きなものを探してて」

「急にどうしたの?」

「いや〜、ある人に言われた言葉が妙に刺さっちゃってさ」

「じゃあ、今度の土曜日空いてる?」

「空いてるけど…」

「私にいい考えがある!!」

 ショウコの可愛いキメ顔が炸裂する。


 ほぼ満員のライブ会場。キャパシティは900人程。

「で、ここは__」

「リトリリのライブ会場だよ! ほら、こないだあったソラさんの!」

「いや、そうなんだけど」

 空気感に慣れず落ち着かないアズハ。

「実際に好きな事をやってる人を見れば多分アズハの心も少しは変わると思うよ」

「そう、なのかな…」

「音楽って凄いんだよ! 想いが声やメロディーに乗って人の心を動かすんだ!!」

 ショウコが当たり前のことを熱弁する。

「分かった分かった」

(そういえばショウコ、昔から音楽大好きだったっけ)

「あっ、始まるよ! ほらペンライト付けて!」

 Overtureから始まりリトリリのパフォーマンスが始まる。

(凄い……)

 圧巻の景色に息を飲み鼓動が昂る。

(この前会った時とはまるで別人に見える)

 ソラの姿に釘付けになるアズハ。ショウコが隣でオタク化しているが目にも入らない。

(ソラさんの気持ちがここまで伝わってくる!)


 雑談をしながらゲーセンに向かう秋帆高校の輩たち。

「でさー、そいつがさー」

「ちょいちょい」

「ん?」

「あの子、すげーこっち見てね?」

 流れる人並みの中、アカリがじっと輩たちを見る。

「え?どこどこ!」

「恋じゃね!?」

 輩たちが顔が認識できる距離まで近づく。動じずじっと見続けるアカリ。

「んだよ、旗部じゃねーか」

「あ〜ほんとだ」

 大笑いする輩たち。

「でもなんか、ふーいき違うくね?」

「そうか? 一緒だろ」


 建物の影にまみれる人気(ひとけ)のない路地裏。輩たちがアカリをフェンスに押し飛ばす。フェンスが激しく軋む。

「ういー、休日に会うなんて縁があるなー」

 アカリに下品な笑いを飛ばす。

「今日はやけに素直だったなー」

「いい事でもあったのかな〜?」

「増やそうと思って……ポイント」

 申し訳程度の声量でアカリが話す。

「何? 意味わかんねー」

「気持ちわり〜」

「お前らには一生理解できないよ」

 輩を1人残らずバラバラに斬り刻むリムス。足元に散らばる輩たちの肉片。

(私の未来を奪わないで)


 自宅に帰り自室で余韻に浸るアズハ。

「は〜」

(凄かったな〜 ソラさんのライブ)

 ライブ気分が抜け切らない。

「プルルルル」

 机の上に置いたスマホが鳴る。ショウコからの着信表示。

「ん? ショウコ?」

 スマホを手に取る。

「もしもし〜」

「大変だよアズハ! ニュースでウチの学校の生徒が殺されたって!」

「何!?」

 ショウコの言葉にアズハの胸がさわぐ。

「それにこの前と同じく犯人の証拠が見つからないらしい、これって……」

 苦い考察がアズハの脳裏に宿る。

「まさか、またプラリィアが……」   


 誰もいない広場でベンチに座るアカリ。噴水を無表情で見つめる。

 噴水の影から現れる1人の女性。首から下げる一眼レフとバッグを揺らしながらアカリに向かって歩き、目の前で立ち止まる。

「君、旗部アカリさんだよね」

「誰ですか?」

 女性が3枚の写真をアカリに見せる。

「私は花塔(かとう)マサミ」

 1枚目、レイプをしてきた男性2人を殺害するリムス。2枚目、ハルキを槍で貫くリムス。3枚目、輩たちをバラバラに虐殺するリムス。

「それは!」

「大丈夫、私は君の味方だ」

 動揺するアカリをマサミがつかみどころのない笑顔でなだめていく。

名前         プラリィア名       キーポイント

晴ノ日ソラ      リィアクラーカ      艶やかな美人   

月島レイ       リィアジッカー      快楽

伊藤ルリコ      リィアハナビ       富

章野アズハ      リィアセシィ       自尊心

斜々羅リッカ     リィアナャーコ      自由

旗部アカリ      リィアリムス       明るい未来

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