植物集め
目の前にいるヴァノミアが攻撃してこないと知れてよかったが――
「これ、どうすればいいと思う?」
「ここに放置は……ダメだろうな。砂浜に連れて行くか?」
「あのヴァノミアがいなくなったから、砂浜にいる必要はないだろ」
「それも、そうだな」
今日は、もう一晩ここに泊まることにした。二日酔いはつらかったけれど、日課の運動を済ませた後に森の中にある植物を一つ一つ記憶していく。ヴァノミアのおかげで動物は一匹もいないが、虫はいた。虫がいるおかげで、植物も死なずに済んだのだろう。
今日だけで数十種類の植物を記録することができた。記憶してく中で、いくつか面白い植物も発見した。
【ジンジャードラゴンの花】
レア度★★★★
洗浄の効果
【ハイパーハイビスカス】
レア度★★★
魔力の回復
【ノイノイ】
レア度★★
目覚め薬に使われる
ジンジャードラゴンの花は、一本の太い茎の先端にドラゴンの卵のような赤黒い花が咲いていた。卵部分を絞ると、生姜の爽やかな匂いと共にスライムのような液が出てきた。手を擦ると、軽く泡立った。完全に石鹸だ。髪をちゃんと洗いたかったので、これは助かる。
ヤドによるとハイパーハイビスカスは、魔力回復のポーションに使われるという。このまま食べても魔力の回復に繋がると言うので、いい拾い物をした。
最後のノイノイは、アンモニアに近い刺激臭がしたが……二日酔いから目覚めるのにはいい薬になった。
植物記憶を確認すると四十種類の植物の記録が完了していた。ジンジャードラゴンの花とハイパーハイビスカス以外の植物のレア度は星一、二だったが、使えそうな植物はたくさんあった。野菜もいくつか食えそうなのが手に入った。
【青パパイヤ】
レア度★
食用可
【キュモウ】
レア度★
美容液に使われる
青パパイヤは、地球で覚えているものと同じだった。キュモウは茶色の太長い植物で、切ると中はきゅうりにそっくりだった。一口食べてみたら、少々アク抜きが必要だが、完全にきゅうりだった。
朝食も食べずに植物記録に集中していたので、腹が減った……。
「とりあえず、飯にするか」
貝の余りを準備、青パパイヤを細切りにしてから見つけていた青唐辛子と一緒に塩胡椒で炒める。
ヤドが肩の上から、小鍋の中を覗く。
「青パパイヤと貝のピリ辛炒めだ」
「美味そうだな」
「だろ。早速、食おうぜ」
炒め物は控えめに言って最高だった。
ほくほく顔で小鍋を綺麗にしていると、頭の上に置いていたリポポネス草が落ちてきた。どうやら枯れたようだ。
「やっぱり栄養がなかったからか? 悪いことしたな……」
他のリポポネス草とヴァノミアは土に埋めたのだが、次の日には全て枯れてしまっていた。