植物操作の使い方
ドロドロの液体が粗品タオルから漏れ、手についてしまう。
アロエを睨みながら叫ぶ。
「止まれって!」
驚くことに、急にアロエから出ていた液体が止まる。
これは……俺の植物操作が働いたのか?
アロエの葉を左右に動かしてみると、俺の操作通りにアロエが動いた。
「凄いな」
「急に使えるようになったな」
ヤドが興味津々に俺がアロエを操っていることに感心した。
操れるようになったのは嬉しいのだが、なぜ急に出来るようになったのだ? 操れるようになる直前に変化したことといえば、植物記憶が使えるようになったが……?
植物記憶を念じる。以前確認した時は焦っていて見えていなかったが、今見ると植物記憶の文字が蔓生成と植物操作よりも太字だった。
植物記憶に意識を集中させると、別の表示が現れた。そこには【ヴァノミアの大食い花(雌)】【ヴァノミアの大食い花の針】【ヴァノミアの大食い花(雄)】と今までに鑑定的に現れた植物がリストアップされていた。
記憶したことで操作もできるようになった……ということでいいのか?
ヤドに相談する。
「ヤドはどう思う?」
「植物操作、蔓以外は本当にできなかったのか?」
「草で試してみた時は、気持ち動いたような気がしたが……微々たるものだったな」
「どの草だ?」
森の近くにある同じ草を採りに行くと、表示が現れる。
【リポポネス草】
栄養価の高い草
「おお、栄養価の高い草らしい」
「本当か? ただの雑草にしか見えないが……これは操れるのか?」
「やってみる」
リポポネス草を操作すれば、簡単の操ることができた。どうやら、植物記憶をすることで操りやすくなっているようだ。これならあのヴァノミアの雌も上手く水攻めできるはずだ。
「栄養価が高いし、これで野菜不足解決するかもな」
「そんな雑草食べたくないな」
ヤドがリポポネス草を小馬鹿にしながら鼻で笑う。
一応、リポポネス草を口に入れ咀嚼してみる。
……あー、不味いな。
ヤドが呆れたように言う。
「そんな雑草、苦いだけだろうに」
なんだかヤドが草を馬鹿にしているのが気にいらず、不味いのは顔に出さずに言う。
「いや、意外と甘く悪くない」
「本当か!」
ヤドがリポポネス草を口に入れた瞬間に口角を上げる。
「おい! アルス! この草、クソまずいじゃないか!」
「だな」
「あ! 騙しやがったな!」
俺もヤドもリポポネス草を口から出した。
拗ねるヤドに謝る。
「ごめんごめん。ほんの出来心で。悪かった」
「俺は甘いものに目がないんだ」
「悪かった。街に行けたら甘いものをたくさん買ってやるから」
「約束だぞ!」
仲直りもしたところで、アロエをボウルに入れる。
「不味い草も食べたし、こいつを水攻めして枯れるか観察するか」
今後使えるかもしれないアロエの新芽を切り取り、マジックバッグに入れる。残りはヤドの水玉で包み、どれくらいで枯れるのかを見守ることにした。