人喰い花
やっぱり人喰い花か!
植物魔法を確認すると、【植物記憶】が新たに使える能力として芽生えていた。
この能力、どちらかといえば植物鑑定のような気がするが、予想していた能力よりも数倍便利そうだ。植物の性質だけではなく、レア度まで表示してくれるのは今後役立ちそうだ。
ただ、前世を含め、そこまで植物を記憶した覚えはない……この世界では今日初めて光る花などを採取したばかりだ。ラッキーで能力を得たのか? この能力は使えそうなので、取得したことに感謝する。
アロエの群生からクチャクチャと卑猥な音がする。どうやら花がアロエを食っているようだ。一本、それからまた一本とアロエが折れては卑猥音が増える。
雌が雄を食う……嫌な現場だ。正直、植物に雌雄って言い方に違和感があるが……魔物に詳しくないので植物記憶の鑑定結果を信じることにする。
目を凝らしてみれば、鼻の後ろには大量の小動物の毛があった。どうやらこいつは毛を食わないらしい。
それにしても、あの毛の量……いつからこの花は島の動物を食っていたんだ? この島の動物を食らいまくって肥大したが、餌がなくなって共食いを始めたって感じか。
本体は下に潜むと言われてもな。こっからはアロエの群生しか見えない。しかも、そのアロエの群生が雄ならば……この花、逆ハーレムかよ。
ヤドに植物記憶が使えることを共有すれば、嬉しそうにはさみを叩いた。
そんなヤドに疑問をぶつける。
「植物操作に比べて、使えるようになるまでずいぶんと早いと思わないか?」
「魔力が増幅してきたからだ。だが、それを考慮してもアルスの成長はかなり早い」
「そうだな……成長はいいことだな」
「まぁ、その話よりも今はあの花が厄介だ」
この島に俺とヤド以外の動物がいないのなら、自ずとやつの狙いは俺たちになる。今は俺の巨体を引きずれないだろうが、海に蔓が到着でもしてしまったら……奴にとっては海鮮バッフェだ。
花が周りのアロエを食らうたびに、太く大きくなっていく。下にある本体が直接食っているのか、アロエがクチャクチャと音を立て地面に吸い込まれる。
「ヤバいな」
「あれは始末しないと、いつか俺たちが食い殺されるぞ」
せっかく転生したのに、人喰い花に食い殺されるのは酷いバッドエンドだ。
「とにかく、これ以上栄養を与えないようにアロエをどうにかしないとな」
「あろえ?」
「以前いた場所ではあれをアロエと呼んで……」
あれがアロエと同じ性質なら、もしかして戦わずの始末することができるかもしれない。
「アルス、急に黙ってどうしたんだ?」
「いい考えが頭に浮かんだ。ヤド、水攻めだ!」