貝狩り
ポツポツと降り始めた雨は、すぐに雨足が強まり突風まで吹き始めた。
「うわ、酷いな。ヤド、大丈夫か?」
「大丈夫だ」
殻に籠りながらはさみだけ出すヤドを見下ろしながら言う。
「その殻、いいよな……」
ヤドを掬い急いでヤシの木の下に避難、少しは雨避けになった。
粗品タオルで顔を拭きながら、突風に耐える。
ヤシの木にしがみ付いていると、ヤドが呟く。
「その図体で飛んではいかないだろ……」
「うるせぇよ!」
先ほどまであんなに天気が良かったのに、この辺の気候の問題か?
雨宿りしているヤシの木や植物からも、この無人島は南国に近い気候だと思っている。
「あ、止んだ」
急に雨が止むと、ギラギラと太陽の光が差した。
スコールか……困るな。
ヤドが空を見上げながら言う。
「『空の叫び』だな」
「なんだそれ?」
「さっきのように急に雨が降ったり突風が吹いたりすることだ」
「そんな名称がついているのか」
空よりも俺が叫びたい気分だ。
しかし、スコールは厄介だ。確か海上でも発生するし、予測が難しい。一日一回なのか、数日に一回なのか……今後観測していくか。
天気も良くなったので、食料の補給に向かう。
本当はこの無人島の中心にある森部分も確認したいのだが、何がいるか分からない。俺は自慢ではないが、今走ることは不可能だ。危険な動物がいたら、その場を動けなくなってしまう。
海辺に来たのはいいが、今の俺は泳げない。マジで情けなくなる。
浅瀬の海に足を入れる。透明度が高い分、小さな魚が泳いでいるのがよく分かる。
こんなに澄んで宝石のようなコバルトブルーな海は見たことがない。ただただ、泳げないことが残念だ。
ヤドは貝を共食いしたいらしい。近場の岩に食えそう貝がないか探していると、ヤドが俺の肩から海へとダイブした。
「おい! 大丈夫なのか?」
「海の中を探してくる!」
本当に大丈夫なのか……?
それから十数分、ヤドが戻らず……不安になった。
気を逸らすために、蔓生成の練習をする。今日は昨日より一本多く蔓が出せた。
「この蔓、もったいないよな」
せっかくなので蔓で籠を編んでみた。適当に作ったわりには、ちゃんとカゴになっていたことに口角を上げる。
懐中時計を見れば、ヤドが海に潜ってからもうすぐ三十分が経とうとしていた。
心配になり浅瀬をウロウロしていると、大きな飛沫と共にヤドが海から飛び出し叫ぶ。
「貝があったぞ!」
ヤドの後ろから飛び出した『貝』を見て、俺も叫ぶ。
「そのデカいのはなんだよ!」
ヤドの採ってきた『貝』は俺が両手で持ちきれるか分からないサイズで、しかも鮮やかな青紫色だった。
それ、絶対、毒貝だろ。