プログレス
「う、ヤド、ごめん。大丈夫か?」
「ああ……」
恐る恐るヤドを確認して、目を見開く。ヤドの前には水の壁が張られ、大惨事から無事に回避していた。
「凄いな」
「咄嗟に出したが無事に成功してよかった。それよりも、アルスは大丈夫なのか?」
「出るものがでたからか、さっきよりすっきりしている」
「それはよかったな」
まだ、眩暈は少しするが我慢できないほどのものではない。
「あれが魔力を使い過ぎた代償なのか?」
「魔力酔いって呼ばれている現象だ。普通、症状はすぐ出るはずなんだが……」
「たぶん俺が痛覚鈍化を使用していたからだと思う」
「痛覚鈍化にそんな使い方があったのか! それは凄い発見だな」
ヤドは新しい魔法の使い方に喜んでいるようだけど、ものも使いようだ。自分の今の限界を知る必要がある。
「魔力って何か数値で見られないのか?」
「魔法ギルドでなら魔力を測ることが可能だが、俺が知っている限り細かい数値は出ない」
「それって魔法職の組合であっているか?」
「魔法を使える者に職を斡旋するのが主なギルドだ」
魔法ギルドの他に狩りギルドや商業ギルドもあるという。説明を聞く限り、ラノベで読んだギルドとそう変わりないようだ。
「じゃあ、アルスは以前、どこかで魔力を測ったことありそうだな」
日記を見れば何か分かるか?
「いや……たぶんそれはない」
ヤドが気まずそうにはさみで頭を掻きながら目を逸らした。
ヤド曰く、セカンドリー魔法を使う者は魔法ギルドに加入するのが難しいという。それはセカンダリー魔法では、魔法関係の仕事が見つからないからだという。
確かにアルスの荷物に商業ギルドのカードはあったが、魔法ギルドのカードはなかった。
「差別だろ、そんなの!」
「あくまで俺が覚えている限りだが、元のアルスの状況を考えるにそれはさほど変わってないと思うな」
セカンダリー魔法に厳しい世界だな、おい!
軽くため息を吐いて気を取り直す。
どの道、そんな心配はいまする必要ない。まずは、この無人島から出ることが先決だ。
「それで、普段測ることができないなら、魔力の限界ってどうやって見極めるんだ?」
「大体は感覚だが……吐き気がする前に背筋がゾワッとする」
「なんかフワっとした説明だな」
「そうとしか言えないからな」
魔力は、一時間もすれば元に戻るという。
一時間待つ間、先ほど生成した蔓を再確認する。
「やっぱり後からだした蔓のほうが、強度が高く長いな」
「ああ、確かに。アルス、なかなかに成長が速いな。この調子なら蔓もすぐに使いものになりそうだな」
「そうか! この世界に来て一番の朗報だな! なんだか、嬉しくなったらお腹空いたな」
「……飯は魔法を使った後にしろ」
「ま、まぁ、そうだよな」
腹は鳴っているが、少し前進したことに心躍った。