表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/37

とりあえず飯を食う

 ルーレットは今後に期待するしかない。当たった小石をポケットに入れると腹が鳴る。

 腹空いた……。


「能力も分かったことだ。飯にしよう……ヤドは何を食うんだ?」

「なんでも食えるはずだ」

「ヤドカリなのにか?」

「俺はヤドカリに見えるが、たぶん普通になんでも食えるぞ」


 どうやらヤドは普通の生物ではないそうだ。まぁ、見てくれもな派手だが……喋っている時点で普通の生物ではないな。


「なんでも食えるならなら、話は早いな」


 さっきの鮮やかな縞々模様の魚をヤドの水で洗い、ナイフと調理具を使って三枚おろしにする。

 魚の捌き方を漁師の友達に習っておいてよかった。

 魚の身は白魚だった。少し切って塩をつけ、生で食ってみる。


「おお、脂が乗って美味いな。ほら、ヤドも食ってみろ」 


 魚の切れをヤドに渡すと、あっという間にその小さな体内に消えて行った。


「覚えているより美味いな」


 俺も、もう一口、いや二口、三口……アルスの身体の食欲ならこの一匹丸々食えそうな勢いだ。

 ヤドと刺身を堪能すると、次の魚は棒に刺す。


「よし、次は焼くか」


 白浜に落ちていた漂流物の木を集め、ヤドに水抜きをしてもらう。これなら火が点くはずだ。

 基本魔法の火を使い集めた木に点火すれば、思ったよりも簡単に燃え移った。これなら魚もすぐに焼けるだろう。

 ぱちぱちと魚が焼ける間、もう一匹捌き同じく棒に刺し焼く。

 しゃがんだ体勢が贅肉のせいでつらく、砂浜に座り込んだが腹の肉が邪魔であぐらすらかけない。


「まずはこの腹の肉をどうにかしないとな」


 ため息をつけば、腹も一緒になった。

 魚の面倒をよく見ながら、生唾を呑む。脂がしたたり落ちる度に、美味そうな匂いが鼻を刺激する。

 魚の回りをウロウロしながらヤドが振り向く。


「もう、いいんじゃないか? 食えるんじゃないか?」


 子供みたいに尋ねるヤドの姿に口角が上がる。


「もう少しだ。いい色に焦げ目がつけば焼き上がりだ」

「美味そうだな」


 これ以上ないタイミングで魚を火から下ろし、マジックバッグに入っていた皿に載せる。

 ヤドが待ちきれずに魚の上に乗る。


「おいおい、火傷すんなよ」

「おー、うめぇな」


 早速食べ始めたヤドを横目に、大口で魚を頬張る。


「おうふ。焼き魚にしたら味が凝縮されたな。こんなホクホクな魚は知らないぞ」


 生も美味かったが、俺は焼き魚の方が好みだった。

 一匹を完食すると、腹八分ほどになった。あの魚の大きさで腹八分とは、アルスは今までどれくらい食っていたんだよ。

 懐中時計を見れば、午前十時だった。時計を見る限り、時間の概念は地球とは変わらないようだ。


「ヤド、それ食ったら島を確認するぞ。反対側なら何か別の島とか見えるかもしれないからな」

「そうだな。それはいいが……ってアルスは何をしてるんだ?」

「立ちあがろうとしてんだよ!」


 贅肉のせいで立ち上がるのも一苦労だったが、島の南へと歩き出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ