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第二希望の人生にさよなら?

カクヨムにて先行しております。

よろしくお願いいたします。

 今日は完全に飲み過ぎだ……。

 同じ酔っ払いの地元の友達二人が手を大げさに振りながら叫ぶ。


「匠海! 気を付けて帰れよ!」

「ああ、お前らもな」


 千鳥足で一人帰宅する。

「最後の日本酒はいらなかったな」


 こんな日は、柄にもなく自分の三十三年の人生について考えてしまう。

 俺の人生はいつも第二希望だった。

 小学生の時の初恋相手の女子には俺の友達の次に好きだと言われた。中学、高校、大学も……似たようないつも誰かの第二希望だった。大学、それから就職も第一希望は落ちてしまった。別に第二希望でも嬉しいのだが、いつかは誰かの……何かの第一希望が掴めればと思って三十三年……結果は微妙だ。

 第二希望で入った就職先も十年ほど激務を頑張った後、三十代になって「俺は一体何をしているのだ?」という衝動にかられ自主退職。ニートを経て田舎へと舞い戻り、実家の農家を手伝いながらこうやってたまに地元の友達と飲みに行く生活を続けて半年が経った。


「よし! 明日はやることもない。昼まで寝るか」


 酔っぱらいの思考なのか、なぜか走って帰る。


「今なら空も飛べる!」


 そんなことを叫びながら走って帰る途中、躓いて盛大に転び頭を打つ。


「痛ってぇ……あれ――?」


 目の前が徐々に真っ黒になっていく……。


   ◇◇◇


 二日酔い特有の酷い頭痛と共に目覚めたのは白浜の上だった。

 砂浜に横になったまま見えたのは、目の前を通る一匹のヤドカリ。ヤドカリと目が合うと慌てた様子で砂の中へと潜っていった。


「ヤドカリ?」


 ヤドカリがいた場所の背景を見れば海だった。

 思考が停止したまま海を眺め呟く。


「海、綺麗だな――」


 いや、そうじゃない。は? 海? 

 急いで砂だらけの身体を起す。


「やっばっ」


 顔についた砂を払い落とすと、頭を強く掴まれるような頭痛がした。


「なんでこんなに頭が痛いんだ? 二日酔いにしてはいつもよりきついな」


 眉間を擦り、頭痛を我慢してもう一度辺りを見回すとやはり一面の海だった。白浜の眩しさのせいで余計に頭痛が増す。


「ここはどこだよ?」


 目の前の海にも景色にも覚えがないのだが……。

 実家から二十分ほど車を走らせた場所に海はあるが、こんな白い砂浜は知らない。

 それに、見た目は海だが全く磯の香りがしない。辺りには建築物はおろか、植物すら生えていない。白浜にポツンと一人座っている状態だ。


「マジでどこだ、ここ?」


 目を凝らし遠くを見渡せば、同じような島がポツポツと無数に広がっているのが見えた。

 雲ひとつない晴天が海に反射して神秘的な光景ではあるが、海辺にいるはずなのに風すら吹いていない。

 夢か……?


「絶対に夢だよな」


 ここがどこなのかという思考を放棄する。

 夢ならもう少し寝るか……白浜に大の字で寝転ぶとすぐに意識を手放した。


 しばらくしてまた目が覚めるが、先程と同じ白浜にいる状況に変わりはない。身体に鈍い感覚はあるが、頭痛は幾分か和らいだ。

 長い夢だな、と思いながらも海水に触れてみる。


「普通に冷たいな……」


 そういえば、俺は昨日の飲み会の後は一体どうした? 家に帰った記憶はない。何か重要なことを忘れているような気がする。

 思い出そうとすれば、軋むような頭痛がした。

 ため息を吐きながら再び砂浜に大の字で横になる。すると、頭上に浮かんだタンポポのようなフワフワの植物が見えた。


「なんだ、これ?」


 何か分からないが、とりあえず突いてみると後頭部に激痛が走った。


「痛っ」


 タンポポを突く度に激痛が頭に響く。

 頭痛の原因はこれだったのか?

 タンポポを怒り任せに抜くと、全身に広がった痛みに耐えきられずに気を失ってしまう。


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