王太子殿下「グレイシア伯爵令嬢、お前との婚約は破棄するけどその前に俺のなろうBLジャンルに関する見解を聞いて!!!!!」伯爵令嬢「腐っ。受けて立ちますわ」
「グレイシア=レーン伯爵令嬢。
俺は、お前との婚約を破棄する」
「まあ、王太子殿下………なんということを!!!!!」
「お前、実は腐っているだろう?」
「まあ、王太子殿下………なんということを!!!!!」
「惚けるな。
お前の平民への差別と日頃からのBL腐教活動は目に余る。
入学以来、薄い本を平民出身の特待生達に無理矢理わたしたりクラスの男子達を✕(かける)してエロい目で見ていると苦情の声が絶えないのが何よりの証拠………!」
「まあ、王太子殿下………なんということを!!!!!」
「お前がいちいち台詞に『王太子殿下』という単語を付けることによって、自分の作品を人気ジャンルの異世界恋愛に食い込ませようとしているBL異端者ということは、火を見るよりも明らか!
もう言い逃れは出来んぞ!」
「何ですかそのムーンライトBLジャンルに喧嘩をふっかけるような発言。マジやめて下さいませ」
そうよそうよ、と周囲のご令嬢数人が口元を扇で押さえ、あまつさえ不快を隠さんばかりに眉間にシワを寄せる。
「あの方、BLの作者様方及び読者様方から叩かれたらどうするのかしら」
「そうですわよ。
今のは全部、王太子殿下個人の意見です」
「煩いぞ、グレイシアの取り巻き共!
グレイシア、これもお前のせいだ!」
どん、とグレイシア嬢の肩を小突く王太子殿下。
「キャッ………!」
するとどうだろう、なんとグレイシア嬢の鞄から、なんかいかがわしい男同士絡み合っている表紙絵の薄っすい本が、30冊ほどバサリと教室の床に散らばる。
「持ち歩きすぎだなあグレイシア嬢!」
「………腐。腐腐腐腐。見られたのならば仕方ありませんわね。
王太子殿下。ここから生きて帰れると思わない方がよろしくてよ」
「どこの死亡フラグ立てたラスボスの台詞だよ。
………まあ、これで本性が現れたようだなグレイシア嬢。
俺はな、お前がBLをこよなく愛する腐女子だということを、きっちりハッキリめっきりパッチャリお見通しなんだよ!」
「パッチャリ………ぷぷぷっ!」
「人の語彙力の無さや発言の粗探しばかり得意になってイキるな!
ふん、流石は腐れ悪役令嬢だな」
「まあ、なんてこと!
腐を馬鹿にしておりますの………?!」
「ああ、馬鹿にしているとも!」
「全部、王太子殿下個人の意見です」
「なんか俺だけを悪者にしようとするな!
いいか、よく聞け。
なろうの女性読者様や女性作者様は、ハーレムや逆ハーレムはめっちゃ叩くのに、なぜBLのハーレムには皆、寛容なのか?
王太子でもあり生徒会長でもあるこの俺が、斜めから切り込んだ解説をしてやろう!」
話の流れの舵を突然90度きって令嬢方を黙らせようとする強引俺様王太子。
ちなみに彼は、俺様って多分、理想的なエロい事を積極的にしてくれる存在な事が多いから人気なんだなと思っている。
故に、俺様を気取って女からモテようと頑張っているタイプでもある。
「まあ、王太子殿下、なんということを!!!!!!」
「そうですわ!
せっかくグレイシア様が異世界恋愛にしようと、悪役令嬢とか婚約破棄とか企てたのに、お姉様ずるいですわ!」
「姉妹ずるいネタも大抵は異世界恋愛だろうが!」
「それこそ偏見でしてよ!
姉妹バトルネタはムーンライトでも鉄板!!!!!」
「煩いっ!!! あと俺が切り込むって言ってるのに話の腰を折るなよ!
………いいか。なろうではな、女共が押しかけてきて困っている体のヤリチン野郎(特にヤリチンはノクターンでは喜ばれている♡)のハーレムチーレムや、尻ガールなお花畑男爵令嬢の逆ハーレムは、女性読者様方からは叩かれたり女性作者様方からはザマァされたりする事が多い。
しかし、逆にムーンライトBLに登場する儚げな美少年や美青年は、全体的になぜかハーレムを持つことを許されている気がする!!!!!」
「なろうを読んでいての王太子殿下個人の意見です」
「一般論ではありません」
「皆様方、お気になさらず。
あいつひとりだけがほざいている感想ですわ」
「俺は王太子なんだが?!」
オールバックにとんがらせた黒髪頭を振り乱し、普メンと見せかけて実は身綺麗にしているだけのイケメンな王太子はビシッ! とグレイシア嬢に指を突きつけた。
「まあ、なんてこと。どこぞの逆転した裁判の主人公気取りかしら?」
「髪型もちょっと寄せてますわよね、ゲームキャラの髪型のマネなどリアルでは痛いだけですわ」
「おいそれコスプレイヤーの皆様方から叩かれるから止めろ」
「お前がその髪型を止めろ」
「俺は王太子だって言ってるだろ口を慎め、このスーパーダイナマイツ☆ナツコ先生がよお!!!」
「な、なぜわたくしのなろうでのペンネームを?!」
「王家の影は有能なのだ」
「変なところ有能ですわね」
「だからいちいち王族を馬鹿にするな!」
「そこは馬鹿にしてもよろしいんじゃなくて?」
「不敬罪だって言ってるだろ!
………ふん。まあいい。
ここは健全なるR18お断りのコメディジャンル世界。
ふしだらな事を言いたいのならムーンライトかノクターンかミッドナイト、BLに関しましてはやはりムーンライトに行ったほうが良いと思います」
「全部、王太子殿下おひとりの意見です」
「合法ロリが好物な王太子殿下にそれを言われたくないですわよね、ホホホ」
「ちょっとその情報をどこで仕入れたか気になるところではあるが、とりあえず知ってるからってなんでもかんでも他人の性癖を公衆の面前で晒すのは良くないと思う」
「全部、王太子殿下個人の意見です」
「これは良いだろうが?!」
「あら。愚かしいこと。
そもそも、そんな事を言いたいのならエッセイジャンルにお引越しでもなさったほうがよろしいのではなくて?」
「なんかエッセイって頭良いイメージがあるからコメディに引っ越したんだよね」
「ついにコメディジャンルの皆様方をピンポイントで敵に回しましたわね。
王太子殿下、恐ろしい子………!」
「全部、王太子殿下個人の意見です」
「クラスの男子達を常に破廉恥な目で見ているお前に言われたくない!」
「腐っ。何をおっしゃいます王太子殿下。
大前提として、ムーンライトBLはエロ枠ではなくファンタジー枠ですわ。
決してリアルの方々をエロい目で見ているわけではありませんの」
「異性が恋愛対象のクラスの男子達の事はエロい目でかけ算してるのにな」
「お姉様ひどい!!!!!」
「お前はどうしてもこれを異世界恋愛ジャンルにねじ込まないと死ぬ病気なのか」
「小さいおっぱいの事しか考えてないおひとが、何をおっしゃいます、不潔な」
「そうですわよ、昨夜もエロフ合法ロリの本読んでたくせに」
「他人のおかずを公開しての社会的処刑は良くないと思う」
「全部、王太子殿下個人の意見です」
「これは別に良いだろうが!」
「偉そうに。こんな誰も読んでねぇ短編で何をほざいているのやら。程度がしれましてよ、殿下」
「だからって何を書いても良いとは限らないからな」
「お前が言うな」
「お前も言うな」
「そこまでだふたりとも!!!!!」
厳かな低い声が後ろから聞こえ、慌てて王太子と伯爵令嬢は振り向く。
そこには、最近、ジャンル異世界恋愛でそこそこにちょっと人気になってきている国王(48才)が、こめかみに青筋を浮かべて立っていた。
「なろうを汚すな汚物共。
あと、姉妹兄弟ずるいネタは各ジャンルに幅広く普及してると思う」
こうして、
王太子は廃嫡、伯爵令嬢は社交界出禁と成りましたとさ。
めでたしめでたし。
結局、斜めから切り込んだ解説はしていない。