暖かな愛
「そういえば、最初、出会った時に
なぜ、カトリーネ様は泣いて………」
「………えっ!?
ああ、ああ、あれは……!」
そ、そういえば………!
最初、海辺で、声を掛けられた時に
涙を流してるの、見られて………!
アラン様には、心配かけないように
見られないようにしていたけれど………
フォロス様には、見られていたの!?
「国王陛下からの、お父様からの、
久しぶりの、お手紙が事務的で、、、
いきなり見知らぬ殿方を、わたくしの
婿養子候補にしたい、って………」
見知らぬ殿方を婿養子候補………のところで
なぜか、フォロス様の表情が固く………
フォロス様? どうされましたか?
「それは、ダシュレード侯爵家の………
未婚の者は、次男の、クルベートですか?」
「ええ、そうです。確か、その名前でしたね。
フォロス様は、ご存知ですか?」
「部隊は違いますが
同僚ではありましたので。」
「まあ! 王都騎士団の………!」
「例えるならば………
ピーター殿を、2倍にしたような
かなり厄介な人です。ですから、
ピーター殿は、割と普通くらいで。」
「な、なるほど………?」
「クルベートは、外面は良いのですが
性格が………貴女の婿養子候補に選ばれ
なくて良かったです。」
「そ、そうなのですか………?
万が一、王都に行った時に、会って
しまったら、どうしましょう!?」
「クルベートは、今は、特殊部隊の施設に
捕まっているから、安心すると良い。」
「あ、そういえば………そうですか。
それなら、誰が何と言っても、白紙に
なりますから、ホッとしましたわ。」
「ええ、本当に。」
さすがの、国王陛下であるお父様も、
この騒動を受け入れて、婿養子候補から
クルベート様は、外れるでしょう。
婿養子………ステフリーシュ辺境伯家の
親族は、ピーター様以外、だいぶ年上で…
やっぱり、王都に行かないと難しいかしら?
「カトリーネ様」
「ええ、何かしら?」
「カトリーネ様の、婿養子候補の婚約者は、
まだ決まっておられないのでしょうか?」
「ええ。実は、そうなのよ。社交界には、
デビューしていないから、殿方の知り合いが
少なくて、結局、決まっていないの。」
社交界デビューしたら、お姉様たちと並んで、
ご挨拶することになりますよね。
社交界デビューは、再来年辺りでも良いかも
しれないわ。20歳になってしまうけれど。
「カトリーネ様、もし宜しければ、
私を、婿養子候補に入れて下さいませんか?」
「えっ!? フォ、フォロス様を??」
「はい、私を、です。」
このお方は、いきなり、何を………?
あ、そうでした!このお方、公爵家の三男で、
公爵家は、継がなくても良い騎士!
鬼才たる騎士団長の弟子である
フォロス様なら、王国からの信用がある
次期辺境伯として、婿入りすることができる!
「あら! 盲点でしたわ!
フォロス様なら、婿養子候補………
次期辺境伯になる資格をお持ちでしょう!
ただ、なぜ、次期辺境伯になりたいのです?」
「次期辺境伯になりたい………というよりは、
貴女を、間近でお支えしたい、のですが………
求婚しても良いでしょうか………?」
「まあ! わたくしと共に、ありたいと?」
フォロス様の、その真剣な表情………!
紫水晶の瞳が輝いて、なんて、綺麗なの!
わたくしは、これは、恋………というより
信用できるという想いが強い愛を感じます。
優しくて、暖かな愛ですね。
「ええ、貴女に惹かれて………」
「まあ!フォロス様、そんなご様子、見せて
下さらなかったじゃない? 驚いたわ!」
「さすがに、護衛騎士としての仕事なので、
表向きは浮つく訳には参りませんし、、、
ただ、護衛騎士として側にいれたら良いと
思っていましたが、貴女を護りたくて、、、
私を婚約者にしてくださいませんか?」
「うふふ。 ええ、フォロス様なら喜んで。」
「えっ? い、良いのですか?」
「ええ。ですから、どうか、
わたくしの前だけは、婚約者として
接して下さらないかしら………?」
「カトリーネ………
分かった。本当に、ありがとう。」
ふわりと柔らかい笑みに、ああ、優しい………
最初、出会った時の柔らかな優しさのままで
このお方なら、やっぱり、信用できる、と。
「カトリーネ………貴女が、好きです。
最初、出会った時、一目惚れして、涙を見て
思わず、声を掛けてしまって………」
「ひ、一目惚れ!? は、恥ずかしい………!
あ、ありがとうございます………!」
「お養父様、お養母様
わたくし、フォロス様を婿養子候補として
推薦いたします。宜しいでしょうか?」
「ほう。 フォロス殿を気に入ったか。
あの者は、儂より強い。宰相の末息子で
イグナーツ辺境伯の孫、騎士団長の弟子………
ふむ、婿養子として受け入れて良かろう。」
「まあ! 素敵ね、カトリーネちゃん!
フォロス様なら、貴女を護ってくれるわ!
身体も、心も! 大歓迎よ!」
「お養父様、お養母様!
ありがとうございます!」