騎士と侍女
「こちらが、
護衛騎士のひとりとして
加わりました、フォロス様です。」
「初めまして。アラン・フォン・ラグニース・
オイレーストです。オイレースト伯爵の孫に
あたります。宜しくお願い致します。」
オイレースト伯爵の嫡孫、アラン・フォン・
ラグニース・オイレースト。28歳。
栗毛の短髪に黒目なのは、弟のピーター様と
同じ。でも、顔立ちは、線の細い中性的で
一見、ピーター様と兄弟には見えない。
「初めまして。ロイベールト公爵が三男、
フォロス・フォン・ゼノン・イグナーツ・
ロイベールトです。」
「フォロス殿、宜しくお願い致します。」
「はい、宜しくお願い致します。」
今日は、護衛騎士同士の、ご挨拶。
お養父様の許可を得まして、
アラン様には、フォロス様のこと、
ルドウィーク殿下のことを報告しました。
なので、今日は、たまに、代理の護衛騎士
フォロス様をご紹介いたします。
本当は、来週から、ルドウィーク殿下の
護衛騎士なのですけれど。
表向きは、わたくしの、という形に
なりますので、口合わせに。
「先日は、弟のピーターが
申し訳ありません!!!!」
「いえ、ピーター殿に名乗れなかったので
仕方がないですよ。顔を上げてください。」
「なんと、お優しい! 寛大なフォロス殿!
ありがとうございます!」
ピーター様とは違って、優しげな紳士に
フォロス様は、ほっとしているみたいです。
まあ、この優秀なアラン様と比べられて
生きてきたであろうピーター様。
あの態度は、劣等感の裏返し、なのかも
しれないけれど、人を見下すような真似は
やめてほしいわね。
「もしかして、海辺にいた時に
一緒にいた護衛騎士の方ですか?」
「はい、いかにも。あの時は、
見知らぬ貴族のお方が近付いてきたので
驚きましたが、まさか、フォロス様が、
あのロイベールト公爵家の方だとは。」
「ふふふ。私も、驚いたわ。
こちらは、王都から遠いから、
滅多に、王都の貴族は来ないのよ。」
「ああ、私の祖父が、
イグナーツ辺境伯なので、国境警備の
手伝いをしていまして、定期的に行くので
遠出には、かなり慣れているんです。」
確かに、王都からイグナーツ辺境伯領までと
王都からステフリーシュ辺境伯領へ行くのは
距離感は、そう変わらない。
イグナーツ辺境伯領に行き慣れた身でしたら、
ここは、来やすい場所なのね。
「あ! ちなみに、
アラン様は第一部隊出身。アリヴィアン様の
部下よ。辺境伯領立騎士団について、彼なら
詳しいから、後で、詳しく、聞くと良いわ。」
「カトリーネ様、ありがとうございます。」
「それから、彼女は、
わたくしの専属侍女のアナベラ夫人よ。」
「お初にお目にかかります。
カトリーネお嬢様の侍女、アナベラ・フォン・
トルコワ・オイレーストでございます。」
「ふふふ。彼女は、アリヴィアン様の長女で、
アラン様の奥方でもあるわ。」
「オイレースト伯爵は、3つ上の兄が継ぐので、
私は、アラン様に嫁入り致しました。」
トルコワ伯爵の次期当主、アリヴィアン様の
ご息女にして、幼馴染であるアラン様に嫁入り
しました侍女、アナベラ・フォン・トルコワ・
オイレースト伯爵令嬢。27歳。
お養父様は、王女でもある辺境伯令嬢なので、
伯爵令嬢のアナベラを侍女に迎えました。
「アナベラ夫人
宜しくお願い致します。」
「はい、宜しくお願い致します。」
おっとりとした真面目な彼女は、
フォロス様を見て、ひと安心したらしい。
アナベラは、フォロス様が、公爵家のご子息
とはいえ、見知らぬ殿方を護衛騎士にすると
アラン様から聞いて、心配したそう。
「騎士団で、私の父に会われたのですね。
フォロス様の後ろ盾を、私の父が担当する
ことになりました。父が信用できると判断した
なら、フォロス様は、信用できるのでしょう。
父の勘は鋭いのでございます。」
「はい、アリヴィアン殿に、感謝を。
ありがとうございます。」
本当に、アリヴィアン様は、有り難い。
トルコワ伯爵、オイレースト伯爵、そして、
ラグニース子爵に、突然現れたフォロス様の
後ろ盾になると宣言したそうで。
アリヴィアン様をかなり信用している3人は、
フォロス様のことを見守って下さるそう。
「あとは、義弟のピーター様が
誠に、申し訳ありません。兄である
アラン様と私は、幼馴染にあたります。
なので、カトリーネ様の幼馴染である
ご自分が、婿養子候補だと、そう思って
しまわれたのです。」
「な、なるほど………?
よく分からない勘違いですね。
気にしていませんから、大丈夫ですよ。
たまに、公爵家の三男だと気付かれにくく
色々と言われるのに慣れていますので。」
「まあ! それは、大変でございますね!」
トルコワ伯爵や、オイレースト伯爵、
兄のアラン様、義姉のアナベラ夫人が注意
しても、アレだから、諦めているわ。
わたくしに、正式な婚約者が現れたら
諦めてくれるかしら………?