騎士団訪問
「フォロス様
おはようございます。
今度は、辺境伯領にあります
騎士団に行きませんか?」
「カトリーネ様、おはようございます。
辺境伯領立騎士団ですか?」
1週間限定の護衛騎士、フォロス様。
王都の騎士団に所属し、王太子殿下と
第二王子の護衛騎士を務めているお方です。
それゆえ、かなり信用されているらしく
ルドウィーク第二王子が滞在するための
早めの準備のために、来られました。
「いざとなれば、
信用できる騎士も必要なはず!
ステフリーシュ辺境伯領立騎士団で
何人か、紹介しましょうか?フォロス様の
身分は言えないですけれど、それでも、
友好を築ける騎士なら、信用できる
かもしれないでしょう?」
「カトリーネ様………
ありがとうございます。
宜しくお願い致します。」
「皆様、ご機嫌よう。」
「「「「カトリーネお嬢様!
おはようございます!!!!!」」」」
わたくしが来たとたん、一斉に中央に集まり、
一斉に、ご挨拶を始めました。
常にいる中で、リーダー的存在の騎士が集まる
第一部隊です。総勢20人規模ですが、かなり
優秀な者たちが揃っています。
ちなみに、私の普段の護衛騎士も、こちらの
部隊から来た騎士の青年です。
「こちらは、新しく、
わたくしの護衛騎士のひとりになりました
フォロス様です。宜しくお願い致しますね。」
「「「「宜しくお願い致します!!!!」」」」
わたくしは、辺境伯家の養女、慣れてはいる
けれど、やっぱり、耳がキーンとするわ。
騎士団の方々は、それくらい声量があるのよ。
頼もしいですけれど。
「こちらは、この第一部隊の隊長を
務めているアリヴィアン様よ。」
「トルコワ伯爵が嫡男、アリヴィアン・
フォン・シュワイエ・トルコワだ。」
「イゼーナ夫人のご子息なのですね。」
第一部隊、隊長の、アリヴィアン・フォン・
シュワイエ・トルコワ次期伯爵。50歳。
辺境伯の親族らしくて、緑の短髪に黒目の
厳つい顔立ちのおじさまだ。
「母上の孤児院に行ったのか?」
「はい、カトリーネ様のご案内で。」
「ふうむ、あの孤児院に行ったのか。
ならば、カトリーネ様に信用されている証拠!
私が、フォロス殿の、後ろ盾となろう!」
「ありがとうございます。」
アリヴィアン様は、非常に世話好きなお方。
家名を名乗らない見知らぬ貴族の騎士でも
わたくしに信用されて、孤児院に行っている
と聞いた時点で後ろ盾を名乗ったのでしょう。
「フォロス殿も、騎士だろう?
我々には、敬語は必要ないぞ?」
「分かった。アリヴィアン殿、宜しく頼む。」
「おう、我々、第一部隊は、フォロス殿を
歓迎するぜ! 宜しくな!」
と、その一言の後、他の隊員の騎士たちに
興味津々に囲まれています。
ふふふ。大人気ね、フォロス様。
「第一部隊、騒がしいぞ!何事か!」
「おう、ピーター、ちょっと新人が来てな。
騒がしくて、すまないな。」
「なんだ、こんな珍しい時期に、新人か。
それは騒がしくなっても、おかしくないか。
って、カトリーネ様が、なぜ、此方に?」
「ええ。 ご機嫌よう、ピーター様。」
栗毛の短髪に黒目の、これまた、厳つい青年。
彼は、きっと、騒ぎを聞いて、隣の敷地から
わざわざ、やって来たのでしょう。
けれど、ピーター様、勝手に、隣の部隊から
来るのはいかがなものかしら………?
はあ、、、厄介なお方が来てしまったわね。
「紹介するわ。わたくしの護衛騎士のひとり
フォロス様です。宜しくお願い致しますね。」
「オレは、第二部隊の隊長を任されてる
オイレースト次期伯爵の次男、ピーター・
フォン・ラグニース・オイレーストだ。」
「カトリーネ様の護衛騎士代理を務めます
フォロスと申します。」
ステフリーシュ辺境伯領の中で
トルコワ伯爵家、オイレースト伯爵、そして、
ラグニース子爵家は、並び称されるほど。
彼は、オイレースト伯爵の孫息子、ピーター・
フォン・ラグニース・オイレースト。18歳。
ラグニース子爵の孫息子でもあるからかしら
ちょっと、偉そうなのよね。
「カトリーネ様、兄上は、どちらに?」
「アラン様なら、1週間だけ辺境伯の警備よ。
フォロス様は、代理なの。」
わたくしの普段の護衛騎士、アラン・フォン・
ラグニース・オイレースト様。28歳。
オイレースト次期伯爵の嫡男、ピーター様の
お兄様にあたる方が、普段、担当しているから
見かけないのが、不思議なのでしょうね。
「カトリーネ様! 貴女さまの護衛騎士に、
なぜ、家名なしをお選びに?カトリーネ様の
護衛騎士なら私をお選びになってください!」
「その選民思想を直してからにして下さる?
フォロス様は、お養父様が認めた方なのよ。」
「し、しかし、、、」
お兄様のアラン様は、謙虚で優しくて
愛妻家な子煩悩、紳士的な護衛騎士。
だけど、弟のピーター様は、わたくしの婿養子
候補だと勘違いして、近寄って来るの。
まあ、でも……… これで、フォロス様には、
ピーター様は、あまり、わたくしに近付けない
方がいいと分かるでしょうから、良いかしら。
「ほら、ピーター、訓練始まるんじゃないか?
隊長がいなかったら、訓練すら出来ないぞ!
第二部隊に戻った方がいい。」
「アリヴィアン……… 分かった。戻る。」
「ふぅ、我が家に着いたわね。」
「カトリーネ様、お疲れさまでした。
ピーター殿の、あの態度は、いったい?
辺境伯令嬢の護衛騎士に対する態度では
ありませんよ?」
「フォロス様、ピーター様がごめんなさいね。
わたくしの普段の護衛騎士のアラン様の弟に
あたる方ですけれど、勘違いが凄くて。」
「勘違い、ですか?」
「ご自分が婿養子候補だと勘違いしているの。
ステフリーシュ辺境伯家の親族だから婿養子に
選ばれたら、ちょうど良い後継ぎ、同い年で
次男坊、幼馴染。だから、わたくしに対して、
遠慮が無いの。お養父様は、彼を婿養子にする
ことは、性格に難ありとして、諦めてるわ。」
「な、なるほど………」
「今度、絡んで来たら、お養父様か、わたくし、
アリヴィアン様に報告して下さいね。」
「はい、かしこまりました。」