一陽来復
「とても綺麗っ! 素敵だわ!」
「ああ、本当に! これを着ている
カトリーネを見るのが、楽しみだよっ!」
「ふふふ。わたくしも、フォロス様が、
こちらのスーツを着てる姿が見たいです。」
冬の終わり頃に、ランタナ商会に注文した
婚姻式用のフォロス様のスーツとわたくしの
ドレスが完成しました。
フォロス様のスーツは、艶やかな紺の布地に
わたくしの瞳と同じ金茶色のネクタイです。
ランタナ商会からのプレゼントなのでしょう。
薄紅色のハンカチーフ付きで届きました。
「まあ! 薄紅色の………!?」
「おお、可愛いらしいカトリーネの色だね
このハンカチ、普段使いしても良いかな?」
「もちろん! 嬉しいわ!」
わたくしのドレスは、ふわふわな爽やかな
淡い薄紫色のものです。
フォロス様の瞳と同じ紫水晶のピアスと
ネックレス付きです。
こちらも、ランタナ商会からのプレゼント
なのでしょう、普段着に良い紺色のドレスも
用意されてありました。
「まあ! どちらのドレスも、素敵だわ!」
「こっちの紺色のも良いね、カトリーネが
大人びて、美しい印象になると思うよ。」
「ふふふ。ありがとうございます。」
「セイゲル様、クリスチーヌ様、
本当に、ありがとうございます。」
「いえいえ、お二人には、妹弟がお世話になって
おりますので、感謝の気持ちを込めて。」
「お小さい時から知っているから、感慨深い
思いで、作らせていただきました。」
「セイゲル殿の、妹弟が、お世話に………?」
「ふふふ。ミリーゼ様とケイトくんのお兄様で
ランタナ次期男爵、セイゲル様と、その奥方
クリスチーヌ様のご夫婦ですよ。」
「ああ、あの二人の!宜しくお願い致します!」
ランタナ男爵家の嫡男、セイゲル・フォン・
ディレーイ・ランタナ次期男爵。22歳。
ランタナ商会の次期商会長様でもある彼は、
ミリーゼ様の実兄で、ケイトくんの異母兄に
あたる方になります。
妹のミリーゼ様を甘やかしてしまう方では
ありますが、商人としては素晴らしい才能を
お持ちのようです。
「ランタナ男爵が嫡男、セイゲル・フォン・
ディレーイ・ランタナ、22歳になります。
こちらは、私の妻、クリスチーヌです。」
「ランタナ男爵家嫡男の妻、クリスチーヌ・
フォン・クライド・ランタナでございます。
お針子として、働いております。」
「ふふふ。このお二人は、新婚さんなの。
クリスチーヌ夫人は、アナベラの親友よ。」
「セイゲル殿、クリスチーヌ夫人、宜しく
お願いします。クライド子爵令嬢ですか?」
「はい、クライド子爵の長女でございます。
フォロス様には、お父様が騎士団にて大変
お世話になっております。」
クライド子爵、コートニー様は、最近新しく
辺境伯領立騎士団、第二部隊の隊長に就任。
ピーター様が、不在なので、クライド子爵が
第二部隊の隊長になりました。
コートニー様の長女がクリスチーヌ様です。
「先日、妹から、
我々に手紙が届きましたよ。」
「あら、ミリーゼ様から………?」
「はい、テムゼーン次期商会長、ロトース様と
ついに、婚約するそうです。」
「まあ!ご婚約、おめでとうございます!」
「はい、祝福をありがとうございます!」
「あの、フォロス様!
弟は、ケイトは、いかがでしょうか?」
「ケイトは、第一部隊か護衛騎士向きです。
後々、アラン殿の部下として、辺境伯家の
護衛騎士として頑張ってもらう予定ですよ。」
「そうですか!いやはや、有難うございます!」
歳の離れた異母弟、ケイトくんを猫可愛がり
しようとして、反発されているセイゲル様。
本当は、セイゲル様は、ケイトくんにぐいぐい
聞きたいそうです。でも、異母兄弟。距離の
取り方が分からずに、悩んでいるそうです。
「ランタナ男爵家はですねー!
トルコワ伯爵家、初代当主の三男坊が
ステフリーシュ辺境伯の親族の中で珍しく
平民として、商人になったタイプのご先祖
なんですよ!後々、男爵家になったんですが
今まで、騎士は、輩出されていないのです!
だからですかね?ケイトが珍しくて!」
「へぇ! そうだったんですね!」
「騎士になりたいケイトは、いやはや、
さすがは、オイレースト伯爵様の曾孫!」
セイゲル様とミリーゼ様の御生母にあたる
セリーヌ様は、他領の商人のご息女でしたが
残念ながら、ランタナ男爵と離縁されまして
ランタナ男爵の10歳も年下の幼馴染である
アラン様、ピーター様の実姉、リリーサ様が
後妻として、嫁入りしました。
そこで、産まれたのが、次男坊のケイトくん。
叔父たちのような騎士になりたいと名乗りを
あげまして、親族を驚かせたそうです。
「ふふ!ケイトを宜しくお願いたしますね!」
「ええ、もちろん、宜しくお願い致します。」