孤児院再び
また、5日間くらいかけて
ステフリーシュ辺境伯領に到着しました。
初めての王都以外の街にアナスタジア様の
目は、好奇心旺盛に、キラキラしています。
か、可愛い………!
ふふふ。まずは、お養父様、お養母様に
アナスタジア様を紹介しましょうか。
「お養父様、お養母様、ご紹介します。」
「初めまして……!アナスタジア・フォン・
ラナンデー・ダシュレード、です………!」
最初は、緊張して、わたくしの後ろに隠れて
おりましたが、ステフリーシュ辺境伯夫妻が
来られると、お行儀良く、座りました。
まだ緊張していそうですけれど、アナベラに
教わったらしく、優雅に見えますね。
「儂が、ステフリーシュ辺境伯家の現当主
コンラート・フォン・ゼッシア・ケンメル・
ステフリーシュだ。」
「貴女が、アナスタジアちゃんなのね。
わたくしは、コンラートの妻、エメライン・
フォン・クラウン・ステフリーシュよ。」
お養父様は、ちょっと警戒しながらの観察。
アナスタジア様は例の件に関わっていなくても
ダシュレード元侯爵の孫娘だからでしょう。
「うふふ。カトリーネちゃんから、聞いたわ。
トルコワ孤児院で暮らした後、わたくし達の
養女になりたい、って……… こちらとしては
トルコワ伯爵でも、オイレースト伯爵家でも
ラグニース子爵家でも、ご紹介するのよ?
アランとアナベラの養女でも良いと思うわ。
我がステフリーシュ辺境伯家を選んだのは
何故か、教えてくださるかしら?」
「わたくしは、大好きな、カトリーネ様の妹に
なりたい、と思ったからです………!」
「まあ! うふふ。カトリーネちゃんったら
子どもに好かれやすいのね。」
「カトリーネは、どう思うのだ?」
「我が家の次期当主は、フォロス様ですから、
跡目争いは、起きません。アナスタジア様を
養女にしても宜しいかと思われます。」
「そうか、、、ならば、しばらくは、孤児院で
暮らし、10歳になったら、養女に迎えよう。
次期辺境伯夫妻の、フォロスとカトリーネを
義妹として、支えるように。」
「まあ!もうひとり娘ができるなんて嬉しいわ!
宜しくね、アナスタジアちゃん」
「辺境伯様……… エメライン夫人………!
ありがとうございます!」
「お養父様、お養母様!
ありがとうございます!」
2年後の春に
ステフリーシュ辺境伯家に
アナスタジアが加わることになりました。
呼び方は、義妹になるので、アナスタジアと
呼ぶことになりました。
兄姉なら、沢山いますけれど、初めての妹分。
つい、可愛いがりすぎてしまいそうだわ。
「こちらが、トルコワ孤児院よ。」
「は、はい、なんだか、緊張します。」
「ふふ。トルコワ孤児院の人たちは、みんな、
優しいから、大丈夫よ。アナスタジア。」
「は、はい! 頑張ります………!」
「あら? いらっしゃいませ〜!
カトリーネ様と、小さなお客様〜!
「ふふふ。ありがとう。いつも元気ね。」
孤児院の受付事務の女性、ミレイ・フォン・
ディーセル・カリナー。27歳。
ミレイが、再び、出迎えてくれました。
「イゼーナ院長先生、いらっしゃいますよ!
おふたりを、ご案内しますね!」
「ええ、ありがとう。宜しくね。」
「まあ! カトリーネ様!
ようこそ、いらっしゃいました!」
「イゼーナ院長先生、こんにちは。
再び、トルコワ孤児院にご依頼がありまして」
「あら? いったい、何でしょうか?」
「この子は、アナスタジア。8歳です。
ステフリーシュ辺境伯家の養女になる予定の
子なのですが、色々と訳ありで、しばらく、
2年くらい、孤児院で預かって下さると。」
「まあ!もちろん、大切にお預かり致します!」
「ありがとうございます!」
子どもたちが大好きなイゼーナ院長先生は、
目を輝かせて頷きました。
曾孫くらいの年代の女の子が増えて嬉しいの
でしょう。貴族令嬢になる為のお勉強を教える
機会が増えて、さらに、楽しみなのでしょう。
「アナスタジア様、初めまして!
わたくしは、この孤児院の長、イゼーナ・
フォン・シュワイエ・トルコワと申します。
トルコワ伯爵家当主、エイベストの妻です。
宜しくお願い致しますね。」
「初めまして! アナスタジア・フォン・
ラナンデー・ダシュレード、です………!」
「まあ!ダシュレード侯爵家の…?
年齢的に、孫娘かしら、それは、確かに、
訳ありですわね。大丈夫よ。こちらでは、
アナスタジア様のように訳あり貴族の末裔の
子もいるのよ。安心してね。侍女見習いに
なるべく、頑張っている子達の良い練習にも
なると思うわ。 これから、宜しくね。」
「は、はい! 宜しくお願い致します!」
「アナスタジア様は、カトリーネ様のように
ステフリーシュ辺境伯家の養女になるのね?」
「はい、わたくしの義妹になります。
まずは、アナスタジア・ダシュレードとして
10歳になったら、アナスタジア・フォン・
ダシュレード・ステフリーシュとして宜しく
お願い致しますね。トルコワ伯爵夫人。」
「はい、承知いたしました。カトリーネ様。」