養女志願
「アナスタジア様
おはようございます。」
「カトリーネ様!
おはようございます!」
わたくしを見るやいなや
ぱああっと輝くアナスタジア様。
か、可愛い………!
「あ、あの、カトリーネ様に
お願いしたいことが………」
「お願い? 何かしら?」
「わ、わたくしを、カトリーネ様の
義理の妹してほしいのです。」
「つまり、ステフリーシュ辺境伯の養女に
なりたい、ということかしら………?」
ステフリーシュ辺境伯家ならば、
王女であろうと、ダシュレード侯爵の孫娘
であろうと、確かに、目立たない。
次期辺境伯は、フォロス様に決定している為、
当主争いも、全く無い。平和かもしれない。
「アナスタジア様
焦らなくても良いのよ?」
「わ、わたくし、カトリーネ様の
義妹になりたいんです………!!」
「まあ! わたくしの、義妹に………」
わたくしの義妹………なんてことでしょう!
ステフリーシュ辺境伯家の養女、すなわち
10歳下の、可愛い義妹ができる………!
魅力的だけれど、養父母である辺境伯夫妻
次第になってしまいそうね。
「状況次第では、少なくとも
2年は、孤児院暮らしになりますが、、、
その後、ステフリーシュ辺境伯家の養女に
なれるかどうかは、辺境伯夫妻次第よ。」
「は、はい! ありがとうございます!」
「ルドウィークお兄様
おはようございます。」
「ああ、カトリーネ
おはよう。 どうだった?」
「ふふふ。ロイべルート公爵家の皆様にも
カイオス伯父様にも、ご挨拶出来ましたよ!
久しぶりに、ディーノ様やピーター様にも
会えたわ。ピーター様か激変してて面白い…
じゃなかった、感動したわ!」
「それは、良かった。楽しそうで、なにより。」
わたくしは、アラン様と共に、〈翡翠宮〉に。
ルドウィークお兄様と、久しぶりに会話して
おります。今や、政敵が居なくなったから、
のんびりと過ごしているそうです。
もちろん、警戒心が強すぎるため信用できる
者しか入れないようになっていますけれど。
その為、使用人………に見える方々、皆様、
特殊部隊の方々で、フォロス様の部下です。
「ああ、そうだ、カトリーネ
アナスタジアの件、ありがとう。」
「ふふふ。こちらとしては、
ステフリーシュ辺境伯家に子どもが
増えて嬉しいわ。」
「アナスタジアに必要なものは?」
「必要? あの子には、まず、休養が必要ね。
トルコワ孤児院なら大丈夫よ。」
イゼーナ院長先生は、いきなり、辺境伯家に
養女としてやって来た、何処の令嬢なのかも
分からない見知らぬわたくしに、優しくて。
わたくしは、そのご恩を忘れてはいません!
イゼーナ院長先生を信じます!
「もしかしたら、ステフリーシュ辺境伯家へ
養女として入る可能性があるわ。」
「アナスタジアを、養女として?なるほど。
中立派の辺境伯令嬢ならば違和感は無いな。」
「ええ、いずれね。10歳になってからよ。
アラン様とアナベラ夫妻の娘、アレッタを
侍女見習いにして、会わせてみますわ。」
「ふむ? あのふたりの娘ならば良いだろう。」
アレン様とアナベラの長女にあたるアレッタ・
フォン・トルコワ・オイレースト。8歳。
アナベラにそっくりな可愛いらしい一人娘。
ちなみに、両親不在の間は祖父母に預けられて
いるそうです。
「他にも、歳の近い子どもはいるのか?」
「ええ、まずは、フォロス様の弟子になった
少年騎士たちね。ラグニース次期子爵の子と
ランタナ男爵の次男、ケリーのお兄さんよ!
この三人は、みんな、10歳ね!」
「ふむ? フォロスに弟子入りした者がいると
聞いてはいたが、三人も、か。」
「あ! あと、もうひとり、いるわ!
トルコワ次期伯爵、アリヴィアン様の嫡男、
ブレイデン様の息子、チェスターくんも!
アナベラのお兄様のご子息なのだけれど
あの子も、10歳のはずよ!」
「ほう? 思ったより、多いな。」
アリヴィアン様の孫で、ブレイデン様の子で、
アナベラの甥にあたる、チェスター・フォン・
ロストーゼ・トルコワ。10歳。
アレッタと同様、トルコワ伯爵閣下の
曾孫にあたる子だ。
「カイルくん、ケイトくん、
ティムくん、チェスターくん、アレッタ、
幼馴染になりそうな子たちは、この辺りね。」
「侍女見習いはアレッタ、護衛騎士は?」
「もしも、養女になるなら、侍女はアレッタ、
護衛騎士は、ケイトくんね。」
「その辺りへの紹介、タイミングなどは、
其方とフォロスに任せるさ。宜しく頼む。」
「はい! かしこまりました!」
1週間ほど、王都で滞在して
いよいよ、明日、ステフリーシュ辺境伯領に
帰ることになりました。
帰りのメンバーは、
フォロス様、わたくし、アラン様、アナベラ、
そして、アナスタジア様の5人です。
ふふ。アナスタジア様の件は、お養父様も、
お養母様も、驚きそうよね。