王都立騎士団
ここは、王都立騎士団。
王城近くにある白亜の要塞だ。
副団長に、フォロス様に、案内されている
少女は誰だ!?もしや、噂の婚約者の!?
と、ヒソヒソ、噂話が聞こえてきますね。
わたくしは、フォロス様、アラン様と共に
白亜の要塞の一番奥にあります騎士団長室に
やって来ました。カイオス伯父様に会いに。
もしかしたら、ピーター様にも、ばったり
会うかもしれませんが、この王都立騎士団は、
もの凄く、広いから、分かりませんね。
「フォロス、漸く来たか!
儂は、待ちくたびれておったぞ!!」
「騎士団長、ただいま、一時帰省しました。」
王都立騎士団、騎士団長、カイオス・フォン・
リービィー・クラウン侯爵閣下。63歳。
真っ赤な短い髪に薄めの金茶目の老騎士は、
エスメラルダお母様とエメラインお養母様の
実の兄にあたる、わたくしの伯父様です。
国王陛下にとっては、義兄上にあたります。
「おおお!!久しぶりだな、我が姪よ!」
「はい、カイオス伯父様、お久しぶりです。
フォロス様共々、宜しくお願い致します。」
「まさか、儂の姪と愛弟子が婚約者するとは
思わなんだ!早めに紹介するべきだったか?
いや、紹介したら、逆に、お互い警戒するか?
良きタイミングの出会いに感謝じゃな!!」
「ふふふ。本当に、そうですね。感謝です。」
確かに、伯父様から、弟子のフォロスだ、と
紹介されただけだと警戒してしまうでしょう。
ふふふ。タイミングの良さに感謝ですね!
「して、そちらは見ない顔だが………?」
「こちらは、わたくしの護衛騎士です。
ピーター様の実兄、アラン様です。」
「はい、オイレースト次期伯爵、アランです。
宜しくお願い致します。」
「おお!あいつの兄貴か!?宜しくのぅ!」
「騎士団長!失礼します!!
お呼びと伺って参りました!!」
「おう! ピーターも、やっと来たか!」
「あら、ピーター様、お久しぶりですね。」
「えっ!?カトリーネ様!? フォロス様に
兄上まで!? え、どうして、王都に?」
わざわざ、カイオス伯父様が
ピーター様を呼んでくれていたのね!
幼馴染であるピーター様の見違えるように
鍛えられた肉体と穏やかな顔立ちに、非常に
非常に、わたくしは、驚いています。
アラン様も、あの問題児な弟の急激な変化に
驚いているみたいですよ?
「実の家族と、ロイべルート公爵家、
フォロス様のご家族にご挨拶に参りました。
王都立騎士団にも、ご挨拶を、と思って。」
「それで、わざわざ、王都に……?
なるほど。確かに、婚姻前に、フォロス様の
ご家族には、ご挨拶が必要でしょうね。」
「え、ええ。それにしても、ピーター様、
だいぶ、雰囲気が変わったわね………?」
「そうですか? ありがとうございます。
お恥ずかしい限りですが、、、」
「こやつは、面白いやつでのぅ!
入隊したとたん、教育係のオルグナー
子爵家の三男坊に喧嘩を売ったんじゃ!」
「まあ! 喧嘩を!? ピーター様………!」
「も、申し訳ありません………!」
あわあわしているピーター様を初めて………
いや、本気で、謝っているピーター様を
初めて見たのですけど。ほら、アラン様が
驚きすぎて、まだ、固まっていますよ?
「はははっ! 面白いやつよの!
ピーターは、実力はあるにはあるが、
自分の身分に慢心をしておると見てのぅ。
それゆえ、こやつの同室は、ガンドリージ
侯爵家の次男とオルグナー子爵の三男坊だ!
なかなか、面白い組み合わせじゃろう?」
「騎士団長………ピーターをからかいすぎない
ようにしてくださいね………?」
後で聞きましたが、ガンドリージ侯爵家も
オルグナー子爵家も、王族のひとつ。
そのふたりは、幼馴染で、ピーター様より
2歳年上、この王都立騎士団に10歳から
所属している、ベテラン騎士だそうです。
「はははっ! フォロスは優しいやつじゃな!
うむ、ピーター、すまなかったの!」
「い、いえ! 本当のことでしたので………!」
「あの、カトリーネ様………
ミレーゼのことは誰かから聞きましたか?」
「ええ、ちょっと、聞いただけですけれど……」
「実は、ミレーゼが、毎週のように、騎士団に
押しかけてて、さすがに、ここは要塞なので、
ただの侍女見習い、遠方から来た男爵令嬢を
簡単に入れるわけにはいかないんです。」
「ええ、そうでしょうね。」
「まあ!毎週のように?そんなに、騎士団に
押しかけているの?彼女は、ピーター様の
幼馴染であって、婚約者ではないわよね?」
「はい。幼馴染です。ミレーゼのことは、
オレから注意します。宜しくお願いします。」
「分かったわ。ピーター様にお任せします。
ただ、余計に、ややこしいことになる前に
門番の方々に事情を説明してくださいね?」
「はい、かしこまりました。」