国王と王妃
わたくしたちは、冬が始まる前に
王都へ行くことになりました。
この旅路の同行メンバーは、
ルドウィークお兄様、アリシア様、ラード様、
フォロス様、わたくし、アラン様、アナベラ、
サリィ、ケリーの9人となりました。
ラギ様は、目立たぬように、ちょっと離れた
ところで周りの警備をしております。
大人数なので、目立たないよう街中は通らず、
ひっそりと向かったのです。
5日目の夕方。
ついに、わたくしたちは、
王都〈スクリューン〉に着きました。
旅に慣れていないわたくしとアナベラ、
子どもたちのサリィ、ケリーが、一緒なので
思った以上に、ゆっくりと着きました。
この王都は、まさに水の都。いたるところに
水路が張り巡らされていて、水が豊富な街。
全体が芸術的な白亜の王都〈スクリューン〉は
別名を〈水の都スクリューン〉と言います。
わたくし達は、
まず、王都の中心部にそびえ立つ
白亜の城にやって来ました。
この王城は、15年振りに来ます。
3歳の頃、いきなり養女として引き取られて
以来、そのまま、王都に来る機会など、全く
なかったのですから。
ルドウィークお兄様とフォロス様たちは、
第二王子殿下専用の〈翡翠宮〉へと行った為
わたくしは、アラン様とアナベラ夫妻を連れ
王城の一番奥へと入っていきました。
警備員たちに、フォロス様が通すようにと
おっしゃってくださったので、入れました。
フォロス様がいなかったら、入れなかった
かもしれません。ありがとう存じます。
「お父様
お久しぶりでございます。」
「ああ、本当に、久しぶりだな。
我が娘、カトリーネよ。」
眩い金の短い髪に緑の瞳を持つ高貴な御方
この御方こそ、アンドレアス・フォン・エル・
ブレディ・レオシュリーク国王陛下。55歳。
わたくしの実の父親にあたる存在なのですが、
15年振りにお会いします。
手紙のやり取りしかしていないため、正直、
何を考えているか、よく分からない父王です。
「我が娘、カトリーネよ、其方に間違った
縁談を持って行ってしまって、すまなかった。
あの者は、エリオットの采配で捕まっている
から、安心して良い。」
「はい、フォロス様から、そのように伺って
おります。安心いたしました。」
「フォロスとの婚約、誠に、おめでとう。」
「はい、祝福をありがとう存じます。」
実父と末娘………というよりは、
上司と部下のような気がして来ました。
やっぱり、わたくしの父は、養父である
ステフリーシュ辺境伯閣下ですね。
「慣れない旅で疲れたであろう?
王都にいる間は、フォロスたちと共に
〈翡翠宮〉にて、休むと良い。」
「はい、かしこまりました。」
あら?まだ、第三王女だと明かしていない
わたくしがルドウィークお兄様の〈翡翠宮〉で
休むのは、良くないのでは………?
再婚相手と勘違いされそうなのですけれど…
しかし、お父様とお母様が何を考えているか
分からないので、信用ができるルドウィーク
お兄様の元の方が良いですね。
「ああ、そうだ。
ちょうど、3日後の夜に、王家主催の
夜会がある。もし良ければ、フォロスを
パートナーとして、参加して欲しい。」
「フォロス様とご相談してから、決めます。」
「ふむ?分かった。フォロスに宜しく頼む。」
辺境伯領内で、夜会は、ほとんどありません。
社交ダンスならば出来ますが、暗黙の了解の
ルールは、お養母様から、話を聞いただけ。
社交界に参加するよりは、王都立騎士団への
訪問や、ロイベールト公爵家にご挨拶したい
というのが、本音です。
「そういえば、エリオットが
其方との再会を楽しみにしていたぞ?」
「あら、そうなのですね。」
「自分の妃と子ども達を其方に紹介したい
らしいからな。明日、行くと良い。」
「はい、分かりました。」
あら? いきなり、着いて早々に忙しく
なりそうな予感がいたします。
わたくしは、明日、ゆっくり過ごすつもり
だったのですが、、、
エリオットお兄様は、そんなに、わたくしに
会いたがっていたのでしょうか………?
「カトリーネは、いつ、着くのか?と
そわそわ、待っておったぞ?」
「まあ! そうなのですね。」
「エルネスタやフランシスカに対しては
厳しいあやつが、あまり会わぬ末妹には
甘いと思わなんだ。」
「お父様、明日、フォロス様と共に
エリオットお兄様に会いに行きますね。
ありがとうございます。」
「うむ、宜しく頼むぞ。」
「カトリーネ
お久しぶりですね。
「エスメラルダお母様
お久しぶりでございます。」
ずっと、ただ、眺めていたお養母様より
鮮やかな赤の長い髪に濃いめの金茶の瞳を
持つ淑女が、ようやく、口を開きました。
彼女は、エスメラルダ・フォン・クラウン・
レオシュリーク王妃。53歳。
こちらが、わたくしの実母にあたりますが、
一度も、お手紙は来なくて、、、
末娘には、あまり興味は無いのでしょうか?
何を考えているか、わかりませんね。
「フォロス様との
婚約おめでとうございます。」
「はい、祝福をありがとう存じます。」
「エメライン姉上は、お元気かしら?」
「はい、とてもお元気ですよ。最近な、趣味の
ガーデニングや刺繍にハマっていますね。」
「そう。姉上が、元気なら、良かったわ。」