少年騎士達
「フォロス様、カトリーネ様
お招き、ありがとうございます!」
「お招き、ありがとうございます………!」
「ええ。もちろん歓迎するわ、いらっしゃい。
カイルくん。ケイトくん。ティムくん。」
ステフリーシュ辺境伯家の客間に、ふたりの
可愛いらしい騎士見習いの少年をご招待。
もちろん、フォロス様に紹介するためです。
フォロス様なら、自分で調べる方が早いのに
わざわざ、わたくしから紹介して欲しいとは、
なぜ、なんでしょう………?
「フォロス様、こんにちは!」
「こんにちは。君が、カイルかな?
婚約発表の時に参加していたよね?」
「はい、そうです。僕は、ラグニース子爵家の
嫡男、カイル・フォン・ケイニ・レターズ・
ラグニースと申します。10歳です。」
ラグニース子爵閣下、カイベールト様の嫡男
珍しい青紫の短髪に黒目の10歳の少年です。
婚約発表の時、カイベールト様にご紹介されて
いたラグニース次期子爵でもあります。
「カイルくんは、騎士見習い卒業後に
お父上と同じ海軍に配属される予定です。」
「そうなのか、カイル、これからも宜しく。」
「はい、宜しくお願い致します!」
「初めまして、フォロス様。」
「ああ、初めまして。ケイトくん。」
人懐っこそうな表情の、赤紫の短い髪に
朱色の瞳の、ミレーゼ様そっくりの少年。
中世的な顔立ちです。大人に成長したら
美丈夫になりそうですね。
「ランタナ男爵家の次男、ケイト・フォン・
ミー・オイレースト・ランタナと申します。
嫡男のセイゲル兄上と長女のミレーゼ姉上の
異母弟になります。10歳になります。」
「ランタナ男爵家の次男で、
オイレースト伯爵家の関係者………?」
「ランタナ男爵の後妻、リリーサ夫人は、
アラン様、ピーター様の実姉にあたるの。」
「ああ、だから、オイレースト………!」
はい、ケイトくんは、オイレースト伯爵の
曾孫にあたる子なのです。
ここまで来ると、辺境伯領内の家系図は、
もはや、どうなっているのやら………?
領内から外へ、あまり嫁入り、婿入りしない
ステフリーシュ辺境伯家の親族たちは、身内の
繋がりが深すぎて、わたくしのような養女と
フォロス様のような婿養子は、レアケース。
だから、ピーター様は、ご自分が婿養子に
選ばれると思っていたんでしょうね。
調べたところ、思った以上に、ややこしい
家系図でしたので、調べるのは諦めました。
「ケイトくんは、騎士見習いを卒業後に
騎士団の第一部隊の所属になる予定です。」
「そうなのか、ケイト、宜しく頼む。」
「はい、宜しくお願い致します。」
「フォロス様、初めまして。」
「ああ、初めまして、ティムくん」
金の短髪に黒目、割と小柄な少年、ティム。
彼は、今、初めて、口を開きました。
人見知りで、常に無表情の彼は、何を考えて
いるのか、分からないところがあります。
「僕は、ティム・シェスリオと申します。
騎士見習いの、10歳です。」
「シェスリオ………もしかして、ティムは、
ケリーのお兄さんなのかな?」
「はい、ケリーの兄です。」
そう、実は、ケリーのお兄さんで、サリィの
幼馴染にあたる孤児院出身の騎士見習いです。
孤児院を訪ねたトルコワ伯爵の推薦を受けて
騎士団の騎士見習いとなり、カイルくんや、
ケイトくんの、同期となりました。
「ティムくんは、
騎士見習いを卒業後に、辺境伯家の護衛騎士
として、アラン様の部下になる予定です。」
「アラン殿の? ティム、宜しく頼むよ。」
「御意。 宜しくお願い致します。」
「あの、3人で
相談して決めたのですが!」
「うん? 何を相談したんだい?」
「僕らを、フォロス様の騎士としての弟子に
してください………!」
「フォロス様、どうか、お願い致します……!」
「えっ!? 私の弟子に………?」
少年騎士たちからの、予想外の申し出に
弟子志願に、フォロス様が固まりました。
あら、フォロス様が固まるなんて、初めてね。
ふふふ。どうされるのかしら?
「私は、騎士として、かなり厳しい方だよ?
おそらく、ピーター殿やアリヴィアン殿より
厳しいよ? 君たちは、付いて来れる?」
「僕らは、フォロス様とピーター兄さんの
手合わせを見ていたんです!」
「だから、ご存知の上で申し込んでいます!」
「あー、あの手合わせを見ていたんだね?
それなら、大丈夫かな?分かった、3人とも
私の弟子にしよう。改めて、宜しく。」
「「はい!! 宜しくお願い致します!!」」
「御意。 宜しくお願い致します。」
「いきなり、3人も、私の弟子が………」
「ふふふ。そうね。あの子たちがフォロス様に
弟子入りするなんて、思わなかったわ。」
少年騎士たちが帰った後、フォロス様は、
なんだか、ボーっとしておりました。
ふふふ。さすがに、3人もは、驚きよね!
「私も驚いたよ。まあ、師匠になった以上は、
責任が伴うからね。クラウン侯爵に教わった
ように、あの子たちに伝授しようかな?」
「まあ!伯父様の!?」
「まず、カイルとケイト、第一部隊としても
海軍の指揮としても活躍できるようにかな?
アリヴィアン殿と共に鍛えることにするよ。」
「あら? ティムくんは?」
「ああ、ティムは特殊部隊向きだからなぁ。
ラードとラギの2人と共に鍛えるよ。」
「まあ! 素晴らしいわ!」
あら?今、思いましたけれど
フォロス様に弟子入りする見習い騎士、
これから、増えそうじゃありませんか………?
この辺境伯領は、他にも、トルコワ伯爵家や
オイレースト伯爵家に、将来、騎士見習いに
なりそうな男児は、たくさんいます。
ええ、増えそうね。ふふふ。