叔母と姪
フォロス様は、辺境伯領立騎士団や
海軍部隊に挨拶周りに行っています。
ステフリーシュ辺境伯である
お養父様と、ご一緒に。
今回は、第一部隊に、第二部隊、
辺境伯領内の警備隊、海軍、門番、
全部に、ご挨拶に行くそうです。
何日間か掛けて、ゆっくりと。
それぞれの部隊長、指揮官と、
手合わせも、兼ねているそうです。
今回は、フォロス様の領域と見て
わたくしは着いて行きませんでした。
ピーター様は、気まずいかもしれませんが、
そろそろ、ピーター様とミレーゼ様の二人は、
王都に出発する予定です。なので、その前に
ピーター様と手合わせしたいそうですね。
ちなみに、フォロス様が不在なので、
ルドウィーク殿下の、代理の護衛騎士は、
アラン様となっています。
ラード様とラギ様がいるから大丈夫なん
ですけれど、アラン様は、心配性なところが
ありますからね。
その間、わたくしは、アナベラを連れて、
アリシア様と、のんびりと過ごしています。
「アリシア様、おはようございます。
こちらの生活はいかがでしょうか?」
「サリィと、ケリーが、あそんでくれて!
とても、たのしいわ………!」
ぱああと輝く笑みを浮かべるアリシア様に
わたくしとアナベラは、ほっとしました。
実は、見えないところで、悲しみ、寂しさを
隠しているかもしれません。
ですが、可愛い姪っ子の、アリシア様には、
笑顔が溢れる子に育って欲しいですね。
「おとうさまに、きいたの!!
カトリーネおばさま、フォロスさまと
こん、にゃく? おめでとうございます!!」
「はい。ふふふ。アリシア様
祝福、ありがとうございます。」
ふふふ。正確には、『こんやく』なのだけれど、
4歳の子には、難しいかもしれませんね。
アリシア様、精神年齢的に、おませさんで、
ちょっと、7歳児くらいにも見えますけれど
いろいろと経験したから、かしら?
「ねえねえ
カトリーネおばさま」
「はい、なんでしょうか?」
「カトリーネおばさまは、おかあさまが
どこにいるか、しっているの………?」
「アリシア様………」
「みんなにきいているけれど、みんな、
とおくにいるっていってね!おしえて
くれないの!どこにいるの?おかあさまの
おむかえ、まってるのに、こないの!」
ああ、この子は、アリシア様は、4歳児の
割に非常に大人びていて、周囲の人たちの
雰囲気が、分かってしまうのだ。
ああ、幼い頃のルドウィークお兄様と同じく
知能指数が高いのでしょう。
「アリシア様、貴女のお母様は、
マリーナ様は、確かに、遠くにいます。」
「えっ? ほんとに、とおくなの?」
「はい、遠くにいるんです。」
今、アリシア様のお母様、マリーナ様は、
第二王子妃から外れまして、離縁しまして、
ご家族と一緒に捕まってしまっております。
明らかに、間者という証拠付きだったので、
第二王子妃としての立場を狙っていたのです。
残念ながら、会うことは出来ません。
「アリシア様、マリーナ様は、残念ながら、
帰っては来れないでしょう。」
「おかあさま、かえれないの?なんで!?」
「はい、どうして帰って来れないかは、、、
アリシア様が、成長したら分かるでしょう。」
「おとなになったら、わかるの?」
「ええ。 分かります。」
アリシア様が、成長して………
いえ、その前に、もしかしたら、噂として
伝わることでしょう。
噂で、変に伝わる前に、ルドウィークお兄様
から真実を聞いた方がいいでしょうけれど。
「うん。 わかったわ。
カトリーネおばさまが、そういうなら、
わたし、わたし、がまんする………!」
「アリシア様………寂しさ、悲しさは、
我慢せず、ルドウィークお兄様やラード様、
わたくし、フォロス様、サリィ、ケリーに
貴女は、まだ子どもだから甘えていいのよ。
泣いてもいいのよ。」
「い、いいの………???」
「ええ、愛する、可愛い姪っ子、アリシア様
わたくしは、貴女が大好きよ。」
「カトリーネおばさま!わたしもだいすき!
ねえ、きょう、いっしょ、ねていい?」
「もちろんよ! 一緒に寝ましょう!」
ルドウィークお兄様と、アリシア様の部屋は
別々で、サリィ、ケリーと一緒に寝ている。
それでも、きっと、寂しかったのでしょう。
今日は、一緒に寝ましょうね。
「ルドウィークお兄様、ご報告を。
アリシア様の現状について、です。」
「ふむ? アリシアは、どんな様子だ?」
「あの子は、ルドウィークお兄様の幼少期…
わたくしは噂でしか聞いたことがありませんが
神童と呼ばれていたルドウィークお兄様に似て
いるのではないでしょうか………?」
「昔の、私に………」
第二王子派が出来てしまう程に
ルドウィークお兄様は、幼少期から賢くて……
知りすぎてしまうからこそ、冷めた子どもに
なっていたそうです。
「大人びてて、お母様がいないのが、本当は、
寂しくて寂しくて、かなり我慢していますよ?
お母様のお迎えを、ずっと、待っています。
成長して、母の真実を伝えれる程の教育環境、
良からぬ噂に負けない不動心を、鍛えなくては
いけないでしょう。」
「私も、もはや、傷付いてる場合じゃないな。
マリーナを信じて受け入れたが、この様だ。
大人である私の傷より、アリシアの、娘の
心の方が、心配なんだ、、、。」
「ルドウィークお兄様………
娘の心を心配できる貴方は立派な父親です。
お兄様も、無理は禁物ですからね?焦っては
いけません!あの子に、必要なのは、新しい
お母さんではありません!父親である貴方の
その優しさです!良いですね!?娘の気持ち
ちゃんと、考えてくださいね?後妻を連れて
来たら、さすがに、わたくし、怒りますよ!」
「カトリーネ………ありがとう。分かった。」