兄弟姉妹
「次に、こちらも、婚約発表の後に、
ミレーゼ嬢が、リュディーナ王太子妃の
侍女見習いとして、異動が決まったよ。」
「まあ! リュディーナ様の!?
それは、大変な修行になるでしょうね。
リュディーナ様は、厳しいお方だもの。
ミレーゼ様は、大丈夫かしら?」
「それはもう、大変だろう。リュディーナ様の
側には、王太子殿下も、シルヴォート殿下も、
グレイシー姫もいらっしゃるから、余計に。」
「ええ。厳しい世界だと思うわ。」
あら、これは、予想外の展開ですね………?
ベージュの長い髪に橙色の瞳を持つ美女
エリオット王太子殿下が寵愛しているお妃
リュディーナ・フォン・リトヴァールシュ・
レオシュリーク王太子妃。35歳。
ロイベールト公爵家と並び称されています
リトヴァールシュ公爵の長女にあたるお方。
先代王弟殿下の孫娘のひとりです。
愛妻家なエリオットお兄様は、大変激愛して
いらっしゃると聞いています。
すでに、2児の母親となっていますね。
「なぜ、ミレーゼ様も、王都に?」
「お父上の、ランタナ男爵の希望で。
王都に住む貴族や商家との繋がりを強化する
ために、娘には、情報収集を頼むそうだよ。」
「ランタナ商会の為ですね。確かに、王城の
侍女として働いていく内に、ランタナ商会の
名を広めていくことは可能でしょうけれど、
ミレーゼ様の、あの態度のままだと難しい
気がするのですけれど………?」
「ランタナ男爵夫妻は、ミレーゼ嬢を、かなり
激愛してて、うちの娘なら大丈夫、と………」
ピーター様も、ミレーゼ様も、他領には全く
行ったことが無いそうです。ミレーゼ様は、
わたくしよりも、箱入り娘みたいで。
王城の侍女たちに、失礼な態度を取らないと
良いのですけれど………
「王都に行ったら、視野が開けるかしら?
わたくしは、ピーター様とミレーゼ様、
おふたりの幸福を祈っているわ。」
「カトリーネ、ありがとう。」
「ところで、フォロス様、
リュディーナ様は、お元気ですか?」
「んー、最近は、グレイシー姫がお転婆すぎて
どうしましょうって悩んでたけれど元気だよ。
姉さん女房って感じのお方だよね。」
「ふふふ。そうなのね。いずれ、エリオット
お兄様の子ども達にも、お会いしてみたいわ。」
エリオットお兄様とリュディーナ様の間には
13歳の嫡男、シルヴォート殿下と10歳の
長女、グレイシー姫様がおられます。
わたくしは、王都には、養女になってからは
数回しか行ってないから、会えてないのよね。
「そういえば………」
「うん? どうした?」
「甥っ子、姪っ子で会えたのは、
今回のアリシア様が初めてなのよね。」
兄姉は、全員王都に住んでいますからね
養女となったのは、3歳の頃。
エリオットお兄様とルドウィークお兄様は
末っ子の妹誕生に喜んでいましたけれど
エルネスタお姉様、フランシスカお姉様は
あまり関わりが無いのよね………。
「え、エルネスタ夫人も、フランシスカ夫人も
2児の母親になっているはずだけど………?」
「お姉様たちは、お手紙すら来ないから、何も
情報が入って来ないのよね、どうしてるの?」
「何も連絡が来ていない?姉妹なんだよね?」
「わたくしのこと忘れているんじゃないかしら
ってくらい、何も、連絡は来ていないわね。」
30歳の長女、エルネスタ第一王女と
28歳の次女、フランシスカ第二王女は、
わたくしの歳の離れた実のお姉様たちです。
異母姉妹ではありません。
今や、どちらも、自国の侯爵家の嫡男と結婚
していて、次期侯爵夫人として、2児の母に
なったのだと、エリオットお兄様のお手紙には
書いてあったことがありますけれど
誰と結婚したか、子どもの性別、年齢までは
書いてありません。うっかり、お手紙の内容が
漏れたら、大変だから、詳しく書けなかったの
でしょうね。第二王子派あたりに狙われたら、
大変だったかもしれませんし。
どちらかと言うと、フランシスカお姉様とは
似ていましたけれど、わたくしとは、かなり
歳が離れていますから、養女になる前から、
かなり関わりが薄くて……
「エルネスタお姉様とフランシスカお姉様
今は、どうされているのかしら?」
「サーティー侯爵閣下のエルネスタ夫人は、
10歳の嫡男と7歳の娘が。イーベッテ次期
侯爵、フランシスカ夫人は、8歳の嫡男と
4歳の娘がいるはずだよ。最近は、子育てに
集中しているから、社交場には、あまり。」
「あらまあ、そうなのね。ありがとう。」
サーティー侯爵は外交官や執事、イーベッテ
侯爵は医者や薬剤師を輩出している家柄ね。
会うことがあるのか、分からないですけれど
事前に、知っておいた方が良いわよね。
「フォロス様と、王都に行く機会があれば、
夜会に参加する際に見かけたら声を掛けるわ。」
「うん、そしたら、もちろん、案内するよ。」
「ふふふ。宜しくお願いしますね。」