騎士の覚悟
アラン様のおかげで
ピーター様は、帰られたようです。
アラン様からのご説明に、あまり納得は
していなかったようですけれど………
ステフリーシュ辺境伯家は、侯爵家以上の
殿方を、婿養子候補として求めているのかと
言うと……… 全く、違います………!
殿方の人柄が良ければ、伯爵家の騎士でも
男爵家の騎士でも、貴族ではない騎士でも
自国に住む騎士ならば、わたくしが婿養子に
したいのなら、良いのよ?
でも、ピーター様の、リーダー気質な部分、
キリッとした正義感は良いけど、自分よりも
下だと思うと、見下してしまう性格自体は、
貴族の当主になるのは難しいと思うのよね。
辺境伯家の当主となる以上、身分うんぬん
関係無く、老若男女、領民を、国民を護る
お仕事となるのですから、人を見下すような
殿方を、ステフリーシュ辺境伯にする訳には
いかないの。ごめんなさいね。
まあ、ピーター様は、割と単純、自分よりも
身分が上のお方なら勝てないと思うタイプ。
だから、フォロス様は、侯爵家以上の殿方
だと伝えてもらいましたよ。
ちょっとは、落ち着くと良いのですが………
「ピーター殿とミレーゼ嬢の件を
アラン殿、アナベラ夫人から聞いたよ。」
「あら、一昨日、昨日の件なのに早いわね。」
今日は、急きょ、フォロス様が護衛騎士です。
アラン様が、今日は、念の為、フォロス様が
護衛騎士の方が良いと思ったのでしょう。
「こちらとしては、フォロス様と、ゆっくり
話せる時間があって、嬉しいわ。」
「カトリーネ、ああ、私も、嬉しいよ。」
ふわりと嬉しそうに笑うフォロス様に
こちらも、嬉しくなりますね。
「まず、来月、私たちの婚約発表の後に
ピーター殿は、王都立騎士団の第一部隊に
異動することが決まったよ。」
「まあ!ピーター様が、王都立騎士団に?
しかも、第一部隊なのね!」
王都立騎士団第一部隊は、王族の護衛騎士や
王城の警備のような近衛兵的な側面と国防を
担う部隊として、有名だ。
第二部隊は女性のみ、王族の女性陣の護衛、
第三部隊は、王都の警備員を担当しています。
「今の、王都立騎士団、第一部隊の隊長は、
クラウン侯爵閣下のご嫡男、ディーノ殿だ。」
「あら? ディーノ様なのね!」
「うん、そうだよ。カトリーネにとって、
従兄にあたる彼は、次期侯爵、王妃の甥に
あたる。ピーター殿のようなタイプには
とても、厳しい方だよ。」
「ええ、ディーノ様には、数回しか、お会い
したことがないのだけれど、厳しいお方だと
いうことは知っていますよ。」
クラウン侯爵家の嫡男、ディーノ・フォン・
テレイシュ・クラウン次期侯爵。40歳。
ルドウィークお兄様や、わたくしの、かなり
歳の離れた母方の従兄にあたる騎士です。
「ピーター殿は、トルコワ伯爵の孫息子だけど、
次男坊だから、後継ぎではないよね?」
「ええ、そうよ。後継ぎは、アラン様だもの。」
「ピーター殿の立場なら、本来なら、まずは、
男爵や騎士爵を目指すというのが普通なのに
次期辺境伯の座を狙っているよね………?」
「まあ、あからさまに、そうね。」
あからさまに、伯爵よりも上、侯爵と同等の
辺境伯閣下を狙っておりますね。
たぶん、髪色的に、お養父様の親族ではなく、
お養母様の親族だと思われているのでしょう。
婿が、お養父様の親族で、婿入りできる次男
だから、ご自分が有利だと思っているのよ。
「そういえば、フォロス様は?」
「私は、もともと、騎士爵ではあるよ。
王太子殿下からは、長兄が公爵位を継いだら
医者の次兄と騎士の私は、伯爵位をもらう
予定だったんだ。それが、いきなり、私は、
次期辺境伯に変更になるだけだから。」
「まあ!そうなのですか?」
フォロス様の長兄は、次期公爵で、次期宰相
候補として、フォロス様のお父上から厳しく
育てられたお方のようで。
次兄は、医者として、若くして功績を上げ、
その影響で、伯爵位を賜るそうです。
三兄弟揃って、優秀な方々なのですね!
「ピーター殿は、
ステフリーシュ辺境伯の親族として、
これから、侯爵家以上の貴族騎士との
やり取りに慣れてもらう必要があるんだ。
幸い、第一部隊は、侯爵家の次男や三男、
辺境伯家の次男、同じ伯爵家の次男、三男は
たくさんいるからね。人脈は増えるだろう。」
「確かに、そうですね。騎士として、男爵を
目指すのなら、社交に慣れる必要があります。」
「上層部に認められたら、
男爵か、騎士爵になれるかもしれないね。
もちろん、それは、ピーター殿の努力次第。
私が出来るのは、上司として接するだけだ。」
「まあ!ありがとうございます!
ピーター様の件は、わたくしが関わったら
ややこしい勘違いが生まれそうですから、
お養父様とフォロス様にお任せしますわ!」
「カトリーネ、こちらこそ、ありがとう。」