規格外騎士
「あら? まさか………
フォロス様は、〈黒氷の騎士〉様………?」
「カ、カトリーネ……… 貴女は、なんで
その名前を、知って………!」
「エリオットお兄様が言っていましたよ?
私の部下で、お気に入りって。」
〈黒氷の騎士〉
氷のように鋭く、
容赦が無い冷酷騎士様。
国王陛下とエリオット王太子殿下に
気に入られて、重宝されている騎士なのに
名前が明かされていない謎多き人。
諜報員なのか、隠密なのか、騎士なのか
不明ではあったらしいですけれど。
「フォロス様は、
氷のように見えませんけれど
戦いにおいては厳しいのかしら?」
「ああああ、カトリーネにバレると
なんか、恥ずかしい………!」
「はははっ!フォロスが真っ赤!
初めて見たぞ!面白いな!それは
エリオット兄上が呼び始めたんだ!」
顔が真っ赤なフォロス様………
珍しい、可愛いらしいわ!こんな一面も
あるなんて、普段の、ギャップが………!
「エリオット様のことは、
後日、問い詰めるとして………!
確かに、王太子殿下、ルドウィーク殿下、
特殊部隊のメンバーたちから〈黒氷の騎士〉と
呼ばれていますよ。フォロスと同一人物だと
バレたのは、初めてですね。」
「まあ! 初めてがわたくしで良かったわ!」
「ええ、貴女が、初めてですよ。」
ただ、フォロス様が
エリオット王太子殿下を問い詰める!?
まあ、確かに、黒氷の騎士という名前を
妹とはいえ、流してしまうのは不味いわね。
お、お兄様、まさかの、叱られ案件?
大丈夫かしら………?
「フォロス様、辺境伯領と王都を
行ったり来たり、大丈夫とは言って
いましたが、さすがに、馬車で来るのは
時間かかるんじゃ… 大変ではないですか?」
「大丈夫ですよ。慣れてますので。
あと、馬に乗って移動をする場合もあります
けれど、今回は、ステフリーシュ辺境伯領に
密かに、移動でしたので、走って来ました。」
「は、走って………??
本当に、凄くて、何も言えないわ………」
このお方、規格外すぎるんじゃないかしら?
情報が多くて、追い付かない………!
「はははっ!フォロスは、常識が通用しない!
だから、兄上に気に入られてるんだろうな。」
「ふふふ。面白くて、大変興味深いお方ね。
フォロス様、いろいろと教えてくださる?」
「ええ、カトリーネならば、もちろん。」
「ならば、ラギ!
お前も、こちらに出て来なさい。」
「御意。 はい、かしこまりました。」
ルドウィーク殿下に呼ばれてやって
どこからか、ひょいと出て来ましたのは
灰銀色の短髪に薄緑色の瞳の少年………
あら、こちらも、フォロス様の部下かしら?
「初めまして。カトリーネ様。アールス伯爵が
次男です、ラギユート・フォン・レイベー・
アールスと申します。ラギと呼んで下さい。
宜しくお願い致します。」
「ラギは、特殊部隊のメンバーの一人だ。
常に、ルドウィーク殿下に付いている護衛で、表向きは、フォロスと同じ護衛騎士なんだが、
今は、ひっそり、護衛をしてくれている。」
「あ、ちなみに、王太子殿下に付いている
特殊部隊の執事、レイドは、アールス
伯爵家の嫡男なので、ラギの兄上です。」
ラギユート・フォン・レイベー・アールス。
表向きは、執事の青年。27歳。
え、27歳!? わたくし並みに童顔だから
わたくしより、年下の少年かと………!
まさか、ルドウィークお兄様よりも、年上?
見てないけれど、それが武器なのかしら?
「まあ!普段は、ラード様とラギ様が
お二人で、お兄様をお護りしているのね?
いつも、ありがとうございます。」
「カトリーネ様………
ありがとうございます。」
「カトリーネ様!」
「あら、アナベラ?」
「本館の方に、ミレーゼ様が来られて
いますが、どうされますか………?」
「まあ!突然ね? どうしましょう?」
ミレーゼ様が、先触れも無く、いきなり、
辺境伯家を訪ねてくるなんて、、、
アナベラが、大変困惑していますね。
ちなみに、アナベラが近付いてきた辺りで
すっと、ラギ様は、元の位置に隠れました。
ラギ様は、いったい何処に隠れたのかしら?
「カトリーネ、ミレーゼ様とは?」
「わたくしの幼馴染のひとりになります
ランタナ男爵家の長女、ミレーゼ様です。
まあ、簡単に言うと、ピーター様のことを
好いているお方ですわ。」
「えっ!? ランタナ商会なら、聞いたこと
ありますが、あのピーター殿を………?」
ランタナ商会長を兼任しています、ランタナ
男爵家の長女、ミレーゼ・フォン・ルルノ・
ディレーイ・ランタナ男爵令嬢。18歳。
わたくし、ミレーゼ様、ピーター様の3人は
同い年ということもありまして、幼馴染です。
ランタナ男爵と、次期男爵のロゼット様は
良い人達なのだけれど………
「ちょっと、アナベラと
一緒に、対応して来ますね!」