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お手紙

「これからは

どうすれば良いの………?」


薄紅色の長髪に金茶色の瞳を持つ少女は

涙を浮かべながら、海を眺めておりました。


少女の名は、カトリーネ・フォン・リベラ・

レオシュリーク・ステフリーシュ。18歳。


レオシュリーク王国の第三王女として生まれ、

残念ながら、子どもに恵まれなかった老夫婦の

ステフリーシュ辺境伯の当主夫妻に養女として

引き取られ、ひっそりと暮らして来た彼女は、

途方に暮れていました。


「久しぶりの、お父様からのお手紙………

ダシュレード侯爵家の次男、クルベート様を

婿養子候補として、紹介したい………?

いきなり、どうして………?」 


お父様である国王陛下からの、久しぶりの

お手紙は、事務的なもので寂しくなります。


兄であるルドウィーク第二王子殿下のお妃様、

マリーナ様のご実家ですから、マリーナ様の

弟君にあたる方のことだと思いますけれど


いきなり、見知らぬ殿方を紹介されても

困るのですが………!


「とりあえず、お養父様と執事たちに頼んで

このお方の人柄を探ってもらうわ。」





「こんなところで、涙を浮かべて、

小さなお嬢様、どうされたんですか?」


「な、泣いてないわ!気のせいよ………!

小さなお嬢様って失礼ね、低身長だけれど

わたくしは、れっきとした18歳よ………!」


「18歳!? すみません、失礼しました!」


18歳にしては、小柄、童顔な容姿の上に

可愛いらしい薄紅色の髪色なので、年齢を

勘違いをされやすいのですけれど………


わたくしは、

れっきとした18歳なのですよ?


「ところで、貴方は?この街では見ない顔ね?

いったい、誰なの?」


「ええと……貴女は、どこかのお嬢様なのかな?

よく見たら、護衛騎士がいる………?」


「ええ、もちろん、護衛騎士と一緒よ。

ほら、あちらにいますわ。」


一つに結んだ黒の長髪に紫水晶のような瞳の

穏やかな紳士の青年。明らかに貴族の子息。


でも、社交界に出ないわたくしにとっては

このお方が、誰なのか、わからない。


実は、後ろの茂みに控えている護衛騎士も

分からないです、って表情をしているから

本当に、あなたは、誰なの………?


「では、お嬢様、

この家紋を見たら分かりますか?」


「まあ! ロイベールト公爵家………?」


紺色の布地に、鷲の絵柄が描かれてあるのは、

宰相・ロイベールト公爵の関係者ということ。


彼は、年齢的に、あの宰相の息子か甥っ子に

あたるお方が、わざわざ、辺境伯領に………?


宰相であられるロイベールト公爵の関係者が

わざわざ、この街に来るなんて、、、


いったい、何があったのでしょうか。

それを知っても良いのかしら?


「ロイベールト公爵家の関係者のお方が

なぜ、このステフリーシュ辺境伯領に?

あなたは、何者なのかしら?」


「私は、ロイベールト公爵の三男、フォロス・

フォン・ゼノン・イグナーツ・ロイベールト。

22歳になったばかりだよ。この街には、

ステフリーシュ辺境伯に会いに来たんだ。」


「あら、お養父様に会いに来られたの?」


それにしても、この方、ロイベールト公爵の

三男で、イグナーツ辺境伯の孫息子なのね?


イグナーツ辺境伯は、ステフリーシュ辺境伯

である養父の親友にあたるお方。かなり脳筋の

ように見えて、鬼才の騎士様ですわ。


なかなか、個性の強いお方のお孫様ですこと。


「おとうさま………

えっ?まさかの、辺境伯令嬢………?」


「はい。 わたくしは、ステフリーシュ

辺境伯家の、カトリーネと申します。」


「護衛騎士がいるとはいえ、

見知らぬ男に、名前を伝えるとは………

貴女の街だから慣れてるかもしれない。

けれど、こちらは、異性ですからね?

気を付けてください。」


「ふふふ。ええ、これからは気をつけるわ。

フォロス様、ありがとう。優しいのね。」








「という訳で、お養父様!」


「何が、という訳なのだ、カトリーネ?

そちらの青年は、何者なんだい?」


「お養父様にご用事があるロイベールト公爵の

三男であられるフォロス様をお連れしました!」


「私は、ロイベールト公爵が三男、フォロス・

フォン・ゼノン・イグナーツ・ロイベールト。

ステフリーシュ辺境伯閣下、この度は、お会い

出来て光栄です。宜しくお願い致します。」


フォロス様は、わたくしのお養父様である

ステフリーシュ辺境伯閣下を見て、固まった。


全く似ていない、白髪が混じった緑の短髪に

黒目の60代くらいの騎士。わたくしの祖父と

言っても良いくらいの年代だから。


養父と養女だからなのですけど、もしかして、

知らずに、この街に来られたのかしら?


「ふうむ? 其方は、イグナーツ辺境伯の

孫息子で、宰相の息子か? 三男というと

王太子殿下の、騎士団に所属している?」


「はい、いかにも、その通りでございます。」


「儂が、ステフリーシュ辺境伯家の現当主

コンラート・フォン・ゼッシア・ケンメル・

ステフリーシュだ。其方は、なぜ、此方に?」


「私は、父上であられる宰相から頼まれまして、

こちらの手紙をお届けに参りました。」


「何?ロイベールト公爵閣下から………?」


お養父様の護衛騎士は、フォロス様から、

その手紙を受け取り、慎重に慎重に検査して

丁寧に、お養父様に渡しました。


いきなり、ステフリーシュ辺境伯家に来た

見知らぬ青年ですからね、仕方がありません。


それを理解しているであろう彼は、いたって

冷静に、お養父様のご様子を見ています。






「ふむ………」


「お養父様………?」


「ロイベールト公爵閣下からの伝言だ。

この手紙を届けるロイベールト公爵の三男を

しばらく、我が家で預かって欲しいそうだ。」


「我が家に?わたくしは、構いませんけれど、

フォロス様を、なぜ我が家に聞いても宜しいの

でしたら、教えてくださいませ。」


「ふむ、フォロス殿よ、其方の、この事情を

カトリーネに話しても良いだろうか?」


「はい、もちろん。 父上と祖父から

ステフリーシュ辺境伯家ならば信用できる

とおっしゃっていましたので……」


宰相であられるロイベールト公爵閣下からの

頼みとあらば、こちらは、受けるしかないと

言うことなのでしょうけれど………


国王陛下である父からは、この件について、

何も、お手紙に書いてなかったわよ?


もしかして、宰相の独断? だとしたら、

かなり、厄介なのですけれど………

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