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人生を交換したくて

 血が…

 スカイフォード様から血が出ている。

 テレサがナイフをスカイフォード様の腕に突き立てている。

 暇を言い渡したはずのテレサがなぜここにいるのか。なぜスカイフォード様を刺しているのか。

 違う。テレサはそれでもなお、血走った目を私に向けている。

 狙いは、私。


「て、テレサ…!?あ、あ、スカイフォード様…」


「きゃああああ!!」「うわああああ!!」「取り押さえろ!!」


 あちこちで悲鳴と怒号が聞こえる。

 テレサは、やっとスカイフォード様を刺していることに気がついたらしい。首を傾げて笑っている。


「利き手じゃなくて良かったと言うべきか」


 スカイフォード様は、ナイフを持った腕を掴むと、テレサを片手でひれ伏させた。


「スカイフォード様!!!」


 駆け寄ろうとした所を、トラッド様が制した。


「刺されたのは腕だ!君は危険だから下がりなさい!」

「でも!」

「心配するな、あいつは強い。衛兵が女を捕らえるまで、行かせるわけにはいかないな。ここで君を行かせたりしたら、あいつからぶん殴られるだけじゃすまないだろうからな。…ほら、衛兵が駆け寄ってきた」


 どくどくと脈を打つ音がまるで時計の秒針みたいに聞こえてくる。


「よし、捕らえた。さあ、もう大丈夫そうだ。行っておやり」


 トラッド様が私の肩から腕を離した。

 私は靴が脱げるのも構わずに駆け寄る。


「スカイフォード様!!ああっ!すぐに止血しましょう!」

「裸足じゃないか。そんなに慌てて。これくらいなんてことない。それよりあの女、君を狙っていたぞ」


 ゾッとして、衛兵に連れられていくテレサを見ると、引きずられながら、ずっと私を睨んでいた。


「テレサ!どうして!」

「ああ!ずっと野暮ったくなるように仕上げてあげてたのに!台無しねえ!」


 嘘、嘘でしょう?

 ずっとって、いつから…?


「ずっと羨ましくて!アイリス様のお世話をすればするほどに、立場が入れ替わらないかなってずうっと思っていたの!狡いじゃない!同じ場所に立っていながら、あんたは旦那様や奥様やご兄弟みんなからチヤホヤチヤホヤされて!良い男と婚約して!!どうして私はせかせかと働かなければならないのでしょう!?…でもね、楽しかったわ…!カイン様と一緒にいる時、どんなに快感だったか!カイン様とくちづけした後、アンタに化粧をする時の優越感!…なのに、私がずっとお慕いしていたスカイフォード様にまで手を出して!!」

「そんな…テレサ……」

「七年前かしら、ハイラ国が国賓として招かれてパレードを見た時、スカイフォード様に恋をしたの。奥様から買い出しを頼まれていたのをすっかり忘れて見入ったわ。…ねえ、アイリス様、私と人生を交換してよ」


 テレサは、衛兵から腕を振り解こうとする。

 スカイフォード様が、前に立って私をその背中に隠した。


「スカイフォード様!私、ずっと殿下のことをお慕いしておりました!見てください、この小鳥のブローチ…ハイラ国の象徴であるハチドリですわ!ずっと、ずっと貴方を思っていますから!添い遂げられないのなら、その傷を私と思って大切になさって下さいませね!」


(狂ってる)


 ずるずると引きずられていくテレサをただ呆然と眺めるよりなかった。

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