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僕のことなど忘れて

 嘘よ。

 そんなはずない。


「まさにこの国の宝と言って良いほどの美しさですわ」


 王室の侍女は満足そうに笑っている。


(これが私のはずがないわ!!)


 一体どうなってしまったというのだろう。

 野暮ったいどころか、全てが洗練されている。


(なるほど、王室の侍女ともなると、私のようなちんちくりんでも、とんでもない美女に仕上げられるのだわ…)


 ごくり、と生唾を飲んだ。


「スカイフォード王太子殿下もさぞお喜びになりますでしょう、行って差し上げてくださいませ」


(なぜスカイフォード様がお喜びに…)


 どうやらとんでもない勘違いをされている。

 そう思いつつ部屋を出ると、隣室で待っていたスカイフォード様が、私を見るなりしばし固まってしまった。


「やはり、思った通りだ」

「あ、すごく素敵にしてくださって…」


 静かに私に近づくと、跪いたので驚く。


「アイリス殿に婚約者がいるのは知っているのだが…どうか、今日一日だけ、エスコートさせてもらえないだろうか?」

「えっええ!?私を、ですか?」

「駄目だよな…分かっている、君があんまり綺麗だから…。すまない、忘れてくれ。…そろそろ君の婚約者も祝賀パーティに来るのじゃないか?カイン殿と言ったかな…。綺麗になった君を見て貰ったら良い。これもファン一号へのお礼だ」

「待って待って待って!待ってください!…あの、カイン様のことをご存知なのですか?」

「あっ……。えっと…いや、それは、だな。……実は君のことは前から知っていたのだ。まさか本を読んでくれているとは思わなかったが」

「私を?なぜです?」


 そう言ったけれど、野暮ったいご令嬢、婚約者が見向きもしないご令嬢、そんな噂を聞いたのだなという事くらい、簡単に想像がついた。


「…ちゃんと化粧をし直して、着飾ったらすごく綺麗だろうなと思っていたからさ…。気がついたら、何度もこの国に来ては、君に偶然会えないかなって思うほどには惹かれていた。あの店だって、本当はずっと君と行きたかったのだ」

「まさか!それで何度も!?あり得ません!あり得ませんわ!」

「そう、あり得ない。婚約者がいる人に懸想するなど、王太子としてあるまじきことだよ。忘れてくれ。今日、君に想いを伝えられて良かった。ありがとう。こんな男のことは忘れて…早く婚約者殿の元に行くと良い」

「……わ」

「アイリス殿?」

「私、婚約者など、おりません。お恥ずかしい話ですが、婚約破棄したのです」


 それだけを伝えただけなのに、はあ、と息が切れた。

 急にスカイフォード様の顔色が変わった。

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