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二人の王太子

 それでなぜそうなったのか、スカイフォード様が「そのクリアグラスの調節をしたいから、一緒に来なさい」と言い出したので、王城まで着いていくことになってしまった。


(これの名前は、クリアグラスと言うのね)


 一度つけたらずっとつけっぱなし。度が変われば、その度に調節できる代物らしい。

 俄には信じがたいが、着け続けることで近眼が回復することもあるのだとか。


「君は僕の連れということで通すから、心配せず後ろをついてくれば良い。それに、ここの王子とは子どもの時からの友人だからな。気さくなもんさ」

「イエ、私ハ気サクニナレマセン…」

「ぷっ…ははははは!!なんだよ、僕に対しては自信満々に推理を披露して見せたのに、ここの王子には緊張するのかい?嫉妬させてくれるじゃないか、ファン一号」

「だってスカイフォード様は…」

「ん?」


(スカイフォード様は…ずっと以前から知っていたような気がするわ。…あれ?…でもそれは私が書籍を読んでいたからであって、スカイフォード様はハイラ国の王太子殿下で…今日出会ったばかりの……)


「大変失礼いたしました…」

「はははは!!やっぱり面白いなあ、アイリス殿は」


 お腹を抱えて笑っている。

 名前を呼ばれて、どきっとした。


(今日出会ってから、初めてそんな呼び方をされた)


 私の顔を覗き込むスカイフォード様に、胸の高鳴りを知られたくなくて、目線を逸らした。


「やあ!スカイフォード!元気そうだな!」


 目の前に現れたのは、この国の王太子、トラッド・カシオン王子だ。


「先月会ったばかりだけどな!」

「あれはお忍びだったか?来すぎだ、スカイフォード。スパイ行為か?」


 会話の内容にギョッとしたが、わははははと大笑いをしている。

 どうやら王室ギャグらしい。

 心臓に悪い。周りを見て欲しい、護衛の人たちだって…と思ってちら、と周りを見たが、みんな涼しい顔をしている。


(もしかして、慣れっこなのかしら…?)


 よく分からないままに、私は頭を垂れ続けた。


「ん?そちらのご令嬢は?」

「ああ!驚きたまえ!僕のファン一号だ!」


 ぐいと腕を引っ張られて、トラッド王太子殿下とバッチリ目が合った。

 大慌てで挨拶する。


「お久しぶりでございます。トラッド王太子殿下。アイリス・ドストエスでございます」

「え!?ええ!?スカイフォード、お前……。ああ、いや、アイリス嬢、いつも眼鏡をしていたから気が付かなかった」

「?」

「スカイフォードの連れがアイリス嬢とは…」


 男性陣二人で、なにやらこそこそと内緒話が始まってしまった。

 この感じ、以前にも味わったことがある。カイン様が私と歩いている時に、ご友人と出くわすと肩を組んでコソコソと…。

 ちくり、と胸の奥が疼く。


(馬鹿みたい。何をちくりと感じることがあるのかしら。お二人の王子に対して、自信過剰も甚だしいわ)


 けれど私は俯くことしかできなくなる。

 そのうち、ちらっと私の方を見てトラッド王太子殿下が「祝賀行事までゆっくりされると良い」と仰った。


「お気遣いに感謝申し上げます」

「さあ、行こうか。ぜひ君にして欲しいことがあるんだ」


 私の肩を抱いて、他でもない隣国の王太子に案内されている。


「本来ならご案内されるべきお立場では…」

「ここではよくかくれんぼをして、国王陛下に叱られていたなあ」


 我が国が、ハイラ国とそこまで親密だとは聞いたことがない。

 お忍びとは言え、王族がそんなに頻繁に来れる距離でもない。船で三日の旅路である。


(聞けば聞くほどによく分からない…)


 抱かれた肩が、ほのかに熱を帯びているのには気が付かないフリをした。

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