なぜ僕が退学なのだ?(前半、カイン視点)
「…落第?僕が?」
留年の通知書には、三日前に提出期限を終えた、進級を決めるレポートが、いくつか未提出であったことが明記されていた。
そういえば、アイリスに頼んだはずのレポートを受け取っていない。
父が激しく問い詰めてきた。
「カイン!どういうことか説明しなさい!」
「…そんなの、こちらが知りたい…」
「カイン!!」
「うるさい!!!レポートを持って来ないアイリスのせいだ!!ちゃんと頼んだのに、あいつが持ってこないから!!!僕は悪くない!!」
「お前…正気か?アイリス嬢にそんなことを頼んでいたのか…?」
「婚約者のサポートをするのが女の役目でしょう!?」
詰め寄ると、父は「うっ…」とよろめいて乱雑に書類だのが載っている机に手をついた。
バサバサと紙束が散乱する。
父はそれらを拾い上げて、わずか震えた。
「…これも…これも…全てお前の字ではない…」
膝をついて紙束を握りしめる。下から僕を見上げた。
「お前は、何のために学園に通っているのだ…」
(そんなもの、決まっているのに今更何を)
「退学しろ!!お前にこの家は任せられない!」
「なんだと!?そもそも父さんが婚約破棄を了承するのが悪いんじゃないか!」
「…お前は…っ…。本当に懲りていないのだな。今のままでは、お前の人生は駄目になるぞ」
父はそれ以上何も言わず、部屋を出て行った。
これも全て、アイリスのせいだ。
✳︎ ✳︎ ✳︎
両親へ経緯を説明しなければなるまいと思って、実家に戻った。
既にスカイフォード様より書面を送っているとのことだったが、読んで卒倒していないか心配でもあった。
帰るなり両親から抱きしめられて、驚き固まる。
「まあ、座りなさい…はあ、何から話したものかな…。実は、カイン殿から猛抗議があってな…」
「………はい?」
「自分と婚約していながら、浮気をしていたのではないか、と。他国の王子と天秤にかけるような真似をされて恥をかかされた、と」
「全く、自分こそ浮気三昧だったクセに、くだらない男だわ」
母は吐き捨てるように言った。
「言うに事欠いて、随分と笑えないご冗談を言うようになりましたのね…感心しませんわ」
「アイリスも言うようになったじゃないか。カイン殿の言い分としては、男の浮気は甲斐性だが、女の浮気は許されないと」
「そんな!私は誓って浮気などしていませんし、そもそもスカイフォード様とお会いしたのだって婚約破棄した後で…」
「その婚約だが、取り消した覚えはないと言っている。父君が勝手に承諾したことで、自分は了承していないと」
私は立ち上がり、叫んだ。
「そんな妄言通りませんでしょう!?」
「落ち着きなさい、お前はハイラ国の王太子妃になろうとしているんだ、こう言う時こそ冷静に対処しなさい」
「ですが……!っ!…お父様の仰る通りです…」
「勝手だろうがなんだろうが、了承の返事をもらっているのだ。アイリスは堂々としていれば良い」
「そうですわね」
なんとも後味が悪い。
カインがこのまま納得してくれるとは思えないのだ。
下に見ていた私が優位に立っているみたいで気に食わないだろう。
(どうか何も起こりませんように)
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