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(5)どこまでも…

…………と、一人心不安定のまま時が過ぎ、あれから二ヶ月半経ちまして、冒頭の電車の中。

せっかく見つけた私のタイプの男子学生ともお友達になれず、今日もまた純也はうちでご飯を食べるために一緒に家に帰る途中です…。

週三回は、大島家でご飯食べてくんだよね…。


「純也さぁ、お家の人何も言わないの?

 家でごはんとか食べなくても大丈夫なの?」

二ヶ月も経っているのに訊いてみた。

「俺んち、母さん…いないん…だぁ(今日は!)」

「えっ? …ご、ごめん。変なこと聞いちゃって…」

「ん? 別にいいよ…いつものことだから」


そうなんだぁ、純也…お母さんいないんだぁ。

この時、下を向いてしまった私は、純也の顔の表情なんて見ていなくて…、

私のことをニンマリ顔で見ている純也になんて全然気づかなくて、淋しそうな声の純也に、私は少しの同情をしてしまった…。

馬鹿だ…私は馬鹿、大馬鹿だ。

同情してしまうなんて。


変なことを訊いてしまい、反省しつつ俯いて歩いている私に、純也が言った。

「華奈さぁ、今度の日曜日ひま?」

「え? お出かけだよ」

私は顔を上げて純也を見て答えた。


「誰と?」

「ん? 有紀ちゃんと…」

「どこに?」

「え、んと……」

思わず口ごもってしまうと、純也はしつこく訊いてくる。

「有紀ちゃんと二人? どこに行くの?」

「え、べ、べつに、二人ってわけじゃないけど…」

「他には誰? クラスの子?」

言いづらい…。


私と有紀ちゃんの共通の趣味というか、楽しみというか、それは、コスプレをして仲間と集まることだ。

コスプレの集まりに行くなんて、言いたくない。


そして、この際告白しますけど、有紀ちゃんと私の共通の男性のタイプは、少し小柄でオドオドしているみたいな、あまりというか、全然イケてなくて、小動物みたいな、世の中の言葉を借りていうならば、ハッキリ言っちゃえば、オタクみたいな人!

まぁ、コスプレイヤーにはそこそこカッコイイ人はいるけど、そういう人ではなくて、小デブが好み…へへっ。



「俺も行く! みんなと遊びに行くんだろ? 俺、暇だし、一緒に行ってやるよ」

「はぁぁぁああ?」

これこそ冗談じゃないわよ。

学校の中でも、くっ付かれて困ってるのに、唯一離れられる休日まで…?

それに、「誰も一緒に行ってください」なんて言ってないのに、「行ってやるよ」の意味が全くわからない。


「だ、大丈夫よ。日曜日に会う友達は学校の子たちじゃないし、

 それに有紀ちゃんにも絶対言わないから、純也の秘密」

私は必死だ。

仲間の中には、少し気になってる男の子もいるのに、こんなやつが一緒に来たら大変。

私の恋が……消えてなくなる。


「だからさ、俺いつも言ってんじゃん。

 華奈、信用できないから、常に見張ってなきゃ、危ねーし」

そう言うと、二ヤッと笑い、自分の鞄を私に持たせ、スタスタと自分の家のようにマンションに入って行った。



翌日、学校で、前日の抵抗空しく、純也は有紀ちゃんに「日曜日は自分も行くことになった」と、私の承諾も無しに勝手に待ち合わせをしてしまった…。







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