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(14)黄色い久美ちゃん

「これ!」

はぁぁぁぁあああああああ!?

なんですか? なんですか!? これはなんですか!?


純也がさした部分は、私が久美ちゃんだと思っていた女の子ではなく、彼女の足元に小さい黄色い丸?みたいなのがあって……。


私は、顔を上げて純也を見た。

「これさ、かわいがってたヒヨコの久美ちゃん! 縁日で買ってもらってさぁ。

 テキヤのおじちゃんがメスだっていうから久美ちゃんって名前にしたら、

 大きくなったらオスだった! 

 だいたいさぁ、縁日でメスのヒヨコなんて売ってるわけねーのになぁ。

 子供だからだまされた。あははは~」

あははは~、じゃないよ!!


「こっちが大人になった久美ちゃん!」

別の写真を見せられた。

りっぱな鶏冠と、りっぱな尾をした白い鶏。


「追っかけると逃げるんだよ、久美ちゃん。

 でさぁ、ある日いつものように追っかけたら、ちょっと羽ばたいて、

 道路にいきなり飛び出して、車に跳ねられちゃったんだ。

 立ち直るのに時間がかかった! 裏庭にお墓あるよ? あとで見る?」


私は、人生初めての「開いた口が塞がらない」という経験を17歳で、した。


「どうしたの? 華奈?」

少し、私にお時間をください…。

どーして、鳥に人間の名前つけんだろう…? この人…。

しばし、純也のことを、怪訝な顔でみてしまった。


「俺、華奈を初めて入学式の日に見た時、久美ちゃんに似てるって、

 すっげー嬉しくって、友達になりたくてしょうがなかったんだ―――――――――――」

その後、純也は一人うれしそうに、私と出会った喜びを、長々と語ってくれた。

私は、固まったまま、半分だけ聞いていた。


一年生の時から、ずっと私のことを目で追っていて、二年生になっても同じクラスになれず、声もかけられない。

同じ地元駅を利用していることを知った純也は、毎日、私と同じ車両で通学していたらしい。

だけど、私は、ぜんぜん純也のことに気がついていなくて、たまに、前を歩いている

私を追い越して、振り向いてみたりしたけど、私とは、目も合わなかったらしい。

たぶん、私のタイプではないから……純也は…。


二年間も悩んでいて、そんな時、本間くんの家で、未成年のくせに泥酔するくらいお酒を飲んでしまい、自分の家と、反対の方向に歩いてきてしまい、記憶をなくして、気がついたら知らない家の布団の中だった。


「どうしよう」と悩み、寝かされていた部屋を出て、ソファに座っていた私を見て、ものすごく、チビリそうなくらい驚いて、だけど、嬉しくて泣きそうになったらしい。

それで、絶対このチャンスを逃したくないと思って、あんな訳の分からない、私を「監視」するという案を急に思い立ったようだ


なんだか、楽しそうに語っちゃってくれてる純也に、私は訊いた。

「あのさぁ、久美ちゃんて、ヒヨコで人間じゃないよね?」

「当たり前じゃん」

「えーと、私は、人間じゃなくて、ヒヨコに似ている…と?」

「当たり前じゃん。久美ちゃんに似てんだから」

「ヒヨコの久美ちゃんに似てるから、私が好き…と?」

私はムッとした。


少し笑ってから、純也が言った。

「違うよ、華奈は華奈だろ? 俺が好きになった理由は華奈に一目ぼれしたから…。

 華奈は、俺のタイプだったから」


そして、純也は、私に…キスをし……ようとしたけど、ピヨちゃん姿のまま座っていた私のお腹が邪魔をして…届かなか…った…



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