2、公衆電話って最近見ないよね
高評価など励みになるのでお時間さえよろしければぜひ!
目を開ける。
眼前には、白が広がっている。
「知らない天井だ......」
まさか、こんなことを言う日が来るとは!
⦅こんにちは、新月夕。⦆
耳から聞こえるでもない、脳に直接語りかけてるかのような声が響く。
⦅貴方には、世界を救ってもらいます。⦆
⦅見ず知らずの猫にすら身命すら賭すその精神、まさしく勇者と呼べるでしょう。⦆
「えっと、意味がよくわからないのですが.....」
⦅そこで我が主は貴方に、世界を救えとの命です。⦆
「質問に答えていただけたら幸いです......」
⦅そこは貴方たちの地球の娯楽小説にある、小鬼など魑魅魍魎が跋扈する地。⦆
⦅我らは悪魔などではありませんので、貴方に莫大な力を授けましょう。⦆
「あの〜?」
⦅主は貴方を憐んでいる。思い人と遂げたい中、己の選択とは言えど、死んでしまった。⦆
会話が成り立たない。
⦅なので、お礼を聞いていただくお礼として次元を超えた会話を可能にしましょう。⦆
何やら重要なことをおっしゃった気がするのですが......
華恋さんと会話できるということか!!!嬉しいな!!!!
⦅さぁ、勇者よ。⦆
⦅今こそ旅立ちのときです。⦆
結局終ぞ会話がなり立つことはないまま、また光に包まれ、意識を失った。
目を覚ます。
目の前に広がるのは白......などと言うことはなく、一面の青と緑。
平原にいた。
「なんで!?」
幸いと言うべきか不幸というべきか、周りに誰もいないので、服装などを確認する。
トラックに跳ねられて服はダメになっていたはずだが、見れば歴史の博物館でしか見たことがないような、麻?で編まれた服のセットアップを着ているようだ。
武器?はまあまあ切れ味の良さそうな剣。
そこらへんの草を切ってみると一切の抵抗もなく切れてしまった。
へなへなと腰を抜かしてしまう。
漫画やアニメなどで見てたように、切れる。
ほっぺをつねる。痛い。夢じゃない。
「朝日さんに会いたいよ〜〜〜〜〜〜!!!!!」
目の前にブオンッと言う音とともに半透明な何かが出てきた。
これが世に聞くステータス画面かと思い状況を忘れてウキウキで覗くとそこには電話のマークだけ。
異世界に来てこのマークを見るなんて......!
つい押しちゃう。
誰かに電話がかかったようだ。
「はい、望月です。」
身体中の細胞が、歓喜する。
「朝日さん!?聞こえる!?僕だよ僕!!」
「どちら様でしょうか......?」
すごい怪訝な声を出されてしまった。
「夕だよ!!新月夕!!!」
「夕くんはもう、いません。つまらない悪戯ならよそでやってください。」
初めて聞く、怒気を孕んだ声。
そんなこえもかわいいなぁ〜
「本当だよ!転移?転生?したんだよ!!!!」
「にわかには信じがたいですね......証拠とかはありますか?」
「付き合って一年の記念にってローストビーフを作ろうとして買い物に行ったきり、戻れなかったんだよ」
「ローストビーフはヒレではあまり作りませんので人違いでは?」
「そうなの!?!?」
「ええ。」
少し言葉が優しくなった。ようやく気づいてもらえたみたいだ。
「それでなんで転移?したんですか?」
先ほどまでの白い部屋での経緯を話す。
「なるほど、そうだったんですね。ところでーーーー」
一気に音声が途絶える。
「なんで!?」
慌てても音声は復活しない。
半透明のボートを見ると、『魔力切れです』と表示されていた。
好きだった、夕が死んだ。
つい昨日に。
あんなに浮かれて幸せそうだったのに。
死んじゃえって、言ったからかな。
後悔ばかりが溢れて、涙となってこぼれ落ちる。