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第一話
僕には家族がいる。でも、本当の家族じゃない。僕は捨てられていたんだ。本当の親に…。
僕はまだ、産まれて間もない頃に今の両親に出逢ったらしい。まぁ、赤ちゃんだったし覚えていないのはしょうがないかな…。
俺が覚えているのは草木に香る匂い、虫の鳴き声、水の音、そして、俺を抱えながら泣いている女性…。多分、この人が俺の産みの母親だったんだと思う。俺はベビーカーに置かれ、彼女は俺のそばから姿を消した。
そうして、出逢ったのは育ての両親…今では養父母だ。彼らは当時はまだ、若く結婚したての夫婦だった。置き去りにされた俺を抱え、心配されていた。警察に行き、事情を養父母から説明され、彼らは俺を育てることに決意したらしい。その後、役所に行き、正式に俺は養子となった。