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ココロクローバー ファントム  作者: ひこてる
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「第2話:ババロアの受難・3分見たら死ぬ絵」Bパート

「第2話:ババロアの受難・3分見たら死ぬ絵」Bパート




「ギョエーーー!?どこを見ても3分見たら死ぬ絵ーーー!?」


右も左もどれも同じ絵!嫌でも視界に入ってくる。


「いや……それに元の入口が分からなくなっているぞ」


どの壁にもドアが見当たらない。白く塗られ、絵を被せられているのだろう。


「うそぉ!?出られないってコト!?

「ンフフフフ良いリアクションですねぇ。死にたくなければ早く部屋を出なければなりませんね~」」


ハットーリは大手を広げて退室するように煽るように大声で促す。嫌なヤツ!絶対友達いない。


「ははははやく出ないと!ホムホム!?」


この部屋に後2分もいようものならさっきのと合わせて3分たっちゃう!

ボク館長はホムホムの肩を掴んで激しく揺さぶる。


「ィィイインパクトに騙されずに落ち着いてよく考えてください。」


ホムホムは激しく揺さぶられながらボク館長に静止するように促す。


「3分見たら死ぬのは本物の「3分見たら死ぬ絵」だけでしょう。偽物は見ても大丈夫なんですよ」

「あっ……確かに」

「本物さえ見極められればドアはゆっくり後で探せばいいんです」

「でもどうやってこんなにたくさんある絵から本物を探すのさ!もうあんまり時間もないよ!?」


するとホムホムは裾から絵の具のチューブを両手の指の隙間にそれぞれ3本ずつ取り出した。


「あの、その絵具のチューブは一体……」

「今から片っ端から絵を塗りつぶします」

「えーーー!?なんで!?」

「上から塗り足せばそもそも見えない。それに本物に落書きしようとすればハットーリがそれを全力で阻止するハズ。見分けることができます。」

「なっ……!」


ハットーリは表情こそ見えないが少し渋い顔をしたように思えた。


「ででででも本物に落書きできちゃったらどうするつもりさ!?マジで呪われるんじゃないの!?」

「しなくても呪われるんなら自分で選択した結果の方がいい」

「精神力!いやでもお宝に落書きするのはちょっと……」


ホムホムは若干残念、といった顔でそのまま後ろの壁の絵に近寄る。


「ま、それは場を和ます冗談として、別に落書きなんかしなくてもほら、これとか近くで見ると色合いが似てるだけの下手な絵でしょう。1つ1つ見極めていけば問題ありませんよ」

「下手で悪かったですね……」

「あキミが描いたのか……」


そりゃ準備はしないとね。ハットーリもこの「舞台」のために一生懸命用意したんだろうか。


「登場してからやたらと動き続けたり光を何度も放ったのも私たちをできるだけ中央に誘導させて方向感覚を狂わせるため。ここを密室にして逃げられない我々の反応を見て楽しみたいがため、そうだな?」

「えぇ。しかしアナタ年の割に達観していますねぇ。流石は名探偵さんだ」

「...感受性に乏しいだけだ。」

その時のホムホムの返答がボクには「探偵」への謙遜、あるいは否定のように聞こえた

ホムホムは気を取り直して、とこほんと一息。


「ほれ。隣のやつなんかー...ふーむ?...?」


ホムホムはその絵がどう偽物かと指摘しようと目を細めて眺めていたが……


「それは本物ですよ」

「っぶねーーーー!!!」


ホムホムは驚いた猫のように身体の向きをそのままに後ろに飛びはねた。


「今日一番のリアクションですねぇ」


パチパチと小さく拍手するハットーリをホムホムは顔を真っ赤にしてにらみつける


「館長さんのリアクションは期待どおりでしたし、かの名探偵を赤面させたとあらば上々でしょう。そろそろ閉幕といたしましょうか」


ハットーリは手元の杖をクルクルと回しながら本物だという絵に近づき、そしてホムホムへ杖の先端を再び向ける

また発光するのかとボクは思わず腕で目線を隠したが……

バサバサバサ!


「きゃっ!?髪の中から……ハト!?」


ホムホムのウェーブのかかった髪から3羽ほどのハトが飛び出そうと髪の毛に絡まった。


「おっと探偵。動けばその綺麗な髪が白く染まりますよ」

「なーーっ!?」

「……ゲッ!!」


それって「そういう」こと!?絶対嫌ー!!


ハットーリはボク館長をチラリと見たようだが、まぁいいかと絵に向き直った

まるごしの一般人相手だと思って随分と余裕しちゃって!


「それでは、予告通りこの絵はいただいていきましょう」

「……それはどうですかな?」


わざと挑発するような声色を向ける。もう変装の必要もないだろう。


「おやおや、アナタに何 ズギャン!!!!」


その時、上から降ってきた額縁の角がハットーリのシルクハットを押しつぶした。

ハットーリは両手をMの字に倒れこんだ。


「へへーぃナイスショットー!」


こっそり分かれていたババットが上にかけてあった絵を落っことしたのだ

ババットはボクへ飛び移り、それに合わせてボクも変装衣装を投げ捨てた。


「あ!お前は……!」

「変幻自在、神出鬼没……」


他人の用意した舞台なのは癪だけど、ボクは今日も飛び切りの笑顔で。


「魅惑の怪盗ババロア!今宵も参上!」




「怪盗ババロア……!」

「怪盗……ババ……ロア……!?」

「本物の館長はどうした!」


ホムホムは驚いた表情から一転、鋭い目つきを見せた。


「倉庫にいるから後で助けてあげれば?」

「一緒にいた探偵も気づかずとは。素晴らしい変装技術……いや、それがあなたの能力ですか怪盗ババロア。その姿、憑依変身とお見受けします」

「この姿は確かに憑依変身だけど、変装はボクの技術だよ」

「憑依変身……」


「怪盗ババロア」の独自の能力といえば空を飛べることと耳が良くなることくらい。

それとボクの理想の怪盗の姿になれることかな。


「流石は、怪盗ムースの妹を名乗るだけはありますね」

「名乗ってんじゃなくてなくて本当に妹だからー!!むしろ勝手に怪盗名乗ってるのはあんたらの方でしょーが!!」

「では、その本物を倒して、私の名を上げるとしましょうか」


ハットーリが手をパチンと鳴らすとその手には「カード」がつままれていた。


『おいあれって……』

「うん!召喚だ!」

「いでよドッキラー!」


怪盗ハットーリは杖にカードをスキャンさせる。


『ドッキラー!』


杖から音声が鳴るとハットーリは杖を天へと掲げた。


すると、まばゆい光と共に巨大なびっくり箱のようなモンスター「ドッキラー」が姿を現した。


『ヴァーヴァヴァヴァヴァー!!』


「モンスターの……召喚!?」

「あの杖……ムースコレクションだ!」

『それにヤバいぜ!あれはドッキラー!ウエキラー系の凶暴なモンスターだぜ』

「帽子が喋った!?」


怪訝な顔つきで目をきょろきょろさせるホムホムをよそに、

ドッキラーはパタパタパタパタと「首」をたたみ、まるで「箱」のような姿になった。

そして天板をボクの方へ向け……


「やばっ!」

「ヴァヴァーーーン!!」


まるで大砲のように勢いよく首を伸ばし「頭突き」を繰り出した!


ドカァァアン!!


ボクごと後ろの壁を貫通し、ボクは勢いでそのまま吹き飛ばされる。


「怪盗ババロア!?」

「いった~~!!?」


ドッキラーは勢いよくバチン!と伸ばした首を箱へと収納したのち再び顔を出し、壊した壁をピヨコピョコと越えた


「ハハハ!素晴らしい!」




ハットーリがドッキラーを応援するその間にホムホムは密かに裾からヨーヨーを取り出した


「パワーストリング・ストライク!!」

「!」


バコン!!

ハットーリがホムホムの方へ目線を向けるのと同時に、杖を持っていた右手を天井に弾かれた円盤が弾いた!


「なに!?」


ハットーリは思わず杖を落とし、とっさに右手を抑えた


「シルクハットは上が見づらくないか?」

「くっ……ハトは!?」

「あいにく鳥の世話なら私もするんだ」


ホムホムは常備したままだったケースの中身、事務所のペットの伝言インコのゴンゴン用の餌をこっそりばらまいてハト達を振りほどいたのだ


「チィ!」


ハットーリは深くかぶったシルクハットから目線こそ見えないが、確実にチラリと落ちた杖に目を向けた


「その杖であのモンスターを操っているのか?」


ハットーリはじりじりと足先を杖へと向けようとする。

互いに緊張が走る。

先に動いたのはーハットーリ。しかし杖を拾うのではなくホムホムへトランプのカードを鋭く投げた。

ホムホムは思わずヨーヨーで弾いて防ぐ。

その隙を狙ってハットーリは杖を拾おうとしたが、


バリバリバリバリ!


「ぐぁあああーーー!?」


だが、カードを防ぐのと同時にカーブをつけて投げられたもう一つの電撃ヨーヨーがハットーリにヒット。電撃が襲う。


「パワーストリング・ショック!杖を拾うのは分かってたからな」

「ガフッ……」


ホムホムは黒焦げになったハットーリーを横目に杖を拾う。しかし……


「……使い方がわからん」




ホムホムがハットーリの相手をする一方で怪盗ババロアはモンスターを召喚できる銃、「サモンブラスター」を取り出す。


「向こうが召喚するってんならこっちだっていいよね!」

『おう!こういう時は……ホッピワンズだ!ババロア!』

「オーケー!」


サモンブラスターに「ホッピワンズ」のモンスターカードをスキャン。


『ホッピワンズ!』

「召喚!」


ドッキラーめがけてサモンブラスターを発射!光と共にひっくり返った2段のアイスクリームのようなモンスター、ホッピワンズが現れた。


「ベチョベチョベッチョー!」


ピンク色で眠そうな顔。全身から甘い匂いが漂う。しかしこのホッピワンズというモンスター、全身が毒である。


「ヴァッヴァッヴァッ!」


ドッキラーは再び縮こまり「箱」になる。

それを見るなりホッピワンズはドッキラーへ突撃した。

ギリギリと音をたて、勢いよくドッキラーも突撃。


バチャン!!


ドッキラーはホッピワンズに喰われた!

というよりは真正面から受け止めたホッピワンズの口から頭が埋まって引き戻せなくなった。ドッキラーは抜け出そうとバタバタともがき暴れる。

「モヴァーーー!!」

しかしやがて諦めたのか、ボフンッと煙と共にドッキラーは姿を消した


「ベッチョー」

「ホッピちゃんサイコー!」

「ベッチョ」

「うぉ……お前も召喚できるのか」


その様子を砕けた壁からホムホムがハットーリの杖を手にこちらの様子をうかがっていた。


しかし、その後ろにー


「カエ……セ……」


黒こげのハットーリがホムホムを襲わんと立ち上がった。

しかしホムホムが後ろに振り替えるより早く、ババロアは帽子ーババットをハットーリの顔面へ投げつけた


「あひん!」


ハットーリは再び倒れ、帽子はブーメランのようにババロアの下へと戻った

ホムホムは思わず安堵の息をもらす。しかし、すぐにある違和感を感じた。


「あっ……!」

「これのことかな~?」


ババロアは帽子から杖を取り出す。

先の一瞬にババットが奪い盗ったのだ


「ご協力感謝ー!それでは、ごきげんよう!」

「ベッチョー!」


ホッピワンズは怒って突撃しようとするホムホムへアイスの塊ー否、毒の塊を吐き出した


「ぐっ!」


立ち止まって目を閉じたその一瞬に怪盗ババロアもホッピワンズも姿を消した。

もしやと思い本物の「3分見たら死ぬ絵」に目を向けるとそこに絵はなく予告状が壁に突き刺さっていた


「……お前に協力したんじゃなーい!」


ホムホムは地団駄を踏んで叫んだ






翌日、ハットーリとついでにゼニスキー館長もちゃっかり美術品の転売、横領の容疑で逮捕された新聞が届いた。

「3分見たら死ぬ絵」がまた裏に流れる前に回収できてよかったよかった。

ついでにハットーリから召喚の杖も回収できたのはラッキー!


「ホムホムが出てきたときはちょー焦ったけど何とかなったネ!」

「お前もあの探偵くらい落ち着き持たねぇとな」

「じゃぁもっと現場こなさないとね~」

「むぅ」


ババットは心配性だからかボクの怪盗事業には少し否定的なところがある。

それでもノリノリで手伝ってはくれるから、まだしばらくはわがまま言ってもいいかな」


「あれ?ババロア。靴、汚れてるぞ」

「えっ?どこどこ?」


よく見ると紫の靴に黄色い絵の具のような跡がついていた。


「あー!これ!ホムホムのやつだ!」

「どのタイミングだ?」

「え~~落ちるかなぁ」

「俺は?俺にはついてない?」


ボクはババットを掴んでくるくる回して見る。


「ついてない」

「くすぐってぇ」

「……そりゃそりゃー!」

「ギャハ!ギャハハ!やめろやめろー!」


ババットをもみくちゃにしていると、珍しくベルが鳴った


「ぎょえー……ってこんな時間に誰?」


屋敷への客といえばサイキンくらいだ。思わず条件反射で驚いちゃった。


「サイキンじゃねぇか?」

「待ってくれるって言ったじゃ~ん」


嫌な予感しかしないまま恐る恐る、ガチャリ、ドアを開ける


「はーい!...誰?サイキンさん?」

「ああ突然押しかけてしまい申し訳ありません!ワタクシ最近噂の窃盗事件を調査しているしがない探偵であります」

「……!????」


ドアを開けた先にいたのはニッコニコに満面の笑みを浮かべる灰色ウェーブの女の子...そう、シャーロック・ホムホム。

ボクが何を疑問に感じるべきか、目を点にして判断のつかないままホムホムは間髪入れずにベラネラとしゃべり続ける。


「ここら辺の方に最近何か変わったことがないかと近況を聞いて回っていたんですけどもね、あ~いやぁそういえばおなかすいたなぁ……ご飯まだです?もしよかったら奢りますよ。お話ついでに。ご一緒にどうですか?


ホムホムはわざとらしいウィンクを見せた。


「……」

「……」

「……オコトワリシマース」


ボクはウィンクをしたまま固まったホムホムをドアでそ~っと隠した

しかし、ガンッと突き出したホムホムの脚によってドアが閉じられることはなかった


ひぇえええ!?




次回は「探偵と怪盗・魔女の人形」

それじゃぁまた次回。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

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