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キャットVS熊

 こちらを殺すつもりの相手の懐にいきなり飛び込むのは俺からしたら愚かとしか言えない。

 だが、今俺は一匹じゃない。

 パルモデがいる。

 相手の意識を100%こちらに向けさせる必要がある。 

 誰かを守りながら戦えるような相手じゃあない。

 俺は熊の1番目立つ部分『白い毛で覆われた』喉元に頭突きをかましてやった。


「……グッ!?」


「ダメージ10は入ったろ?」


 ……熊の体力は1000以上あるだろうがな。

 熊でもやはり喉ってのは弱点の様だ。

 不幸中の幸い。こいつは喉の付近の毛だけ白いので狙いやすい。


「ン……ヴァァ!」


「おっ? おっ?」


 バックステップで避けるには問題のないスピードだが、ただ腕を振り回すだけでこの迫力か。

 風圧で2秒ほど空を飛んでしまったぞ。

 直撃したら身体が『八つ裂き』になるのは想像に容易い。


「……まぁ最悪死んでもいいか」


 負ける気はないが死ぬ覚悟は出来た。

 ここで俺が殺されてもこれだけ頭に血が上っているんだ。

 さて次は犬の方と戦おうとはならないだろう。

 俺が殺されたら俺が食われるだけで済む。

 気持ちがスーッと楽になった。


「自分で死に時を選べるなんて最高じゃないか」


「……」


 何だよ来ないのか? 急にボーっとこちらを見て何だよ? 噛みつきでも引っかきでも何でも来い。

 だがな。たとえお前がどれだけ俺を苦しめても俺は爪も牙も使わない。

 その誓いだけは死んでも守る。


「……」


「あん? 本当に終わりかよ?」


 四つ足に戻ってノッサノッサと去っていく。 

 去り際に一瞬笑ったような?


「生き延びたか。おいパルモデ。パルモデ?」


「へいっ! ここにいやす!」


 よくさっきまで小便を漏らしていたのにそんなビシッとした『待て』のポーズが出来るな。

 ここまで格好つける事に必死な奴は俺でも初めて見たぞ。


「じゃあ依頼主の熊に会いに行こうぜ」


「えっ!? 切り替え速いですね!? さっきまで熊と喧嘩してたのに!?」


「いつまでも過去に囚われるなよ」


 十年近く『元飼い主』の事を引きずっている俺が言うセリフじゃないなと少し笑えた。


「いや。それがキャットさん。あの熊が……『ノドシロ』さんが今回の依頼主です」


「へぇ。それは面白くなってきたじゃないか」


「面白くなってきたぁ!?」


 命がけで戦った相手と話をするなんてかなり貴重な経験だ。

 だって殺し合いってのはどちらかが死ぬもんだからな。


「パルモデ。小便ちゃんと片付けとけよ」


「……へぇ」


 なんだかなぁと呟きながら小便の上に葉っぱを被せるパルモデ。


「うんこもだ」


「あっ。バレてました?」


「当たり前だ」






「……合格」


「そりゃ嬉しいね」


 洞窟に入って一分ほど見つめ合うとノドシロはそう言った。

 先程とは全く違い穏やかな顔だ。

 パルモデを呼んで来たいが、ここでこいつがまた喧嘩を売ってきたら困るから止めておいた。


「このノドシロ。あんた程の本物の目をした動物を見たことがねぇ。悪いがテストさせて貰ったよ。ハンパモンには任せられねぇからな」


 ……テストね。随分激しいテストだったな。


「率直に言うと。ある人間を病院へ連れて行って欲しい。多少手荒でも構わん。あんたなら信用出来る」


「人間を? その人間はどこか病気なのかい?」


「……痴呆だ」


「ふぅん」


「……ふぅんってお前」


 ボケ老人を病院へ連れて行く。多少手荒でも構わない……

 熊の依頼なんて『シャケ取りのお手伝い』ぐらいに思っていた俺は、この力も頭も使いそうな依頼をどう断ろうか考えていた。

















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